28話 スルトVSミゲイリ

<スルト視点>


「貴様が持っているその剣、魔剣だろう」

「だとしたらなんだ?」

「貴様のその魔力量、魔剣からの魔力供給を得ているのだろう」


 ほう、察しが良いな。

 レーヴァテインを手に入れてからあれこれと実験したが最初に気が付いたのは握っている間欲しい分の魔力を供給してくれることだ。


 もちろん無尽蔵ではないが魔導士の魔力の10倍くらいは余裕で供給してくれる。

 俺が燃費の悪い魔法を使いまくれるのもレーヴァテインを握っているからだ。


「魔魂スキルの多くは代償がある。魔剣も例外ではない。それほどの力を発揮したのだ。そろそろ体に何かしらの反動が訪れていることだろう」

「……ふん」

「図星か」


 ――え?そうなの?

 レーヴァテインって何か反動があったの?

 これまで特に気にせず使ってきたけど特に体に不調を感じたことはなかったけどな。


 知らず知らずのうちに生命力とか寿命を取られたり……

 でもそんな気配もないしな。なんでだろう、うーん……


 考え込んでいるとミゲイリはどこに隠し持っていたのか細くて長い棍棒を取り出して構えた。


「魔棍リジル」


 魔棍、ということは魔剣の棍棒タイプってことか。

 レーヴァテインのそれと違い棍棒の形状をしている。しかし洗練された形状。そして先端の箇所に宝石のようなものが埋め込まれている。あの宝石から強い魔力を感じる。あれが力の源か。


「これの代償は攻撃魔法が土属性以外使うことができなくなるが、土属性の魔法が強化される。そちらの魔剣の代償はなんだ」

「貴様のような下々と同列に考えるでない。俺様の魔剣に代償などない」

「法螺を吹くな!!」


 ミゲイリは踏み込んでこちらとの距離を一気につめ最初に俺の心臓に目掛けて突き攻撃を仕掛けてくる。

 それをレーヴァテインの刃で防ぐとすかさず二度、三度、四度と連続で突き攻撃をしてくる。

 今度は体全体を捻り全て回避した。


 メアとの立ち合いのおかげでこういう体を使って避けるっていうのは慣れてんだよ。


 続いて相手は薙ぎ払いを繰り出すが飛びあがり回避する。

 地面に着地してミゲイリの様子を伺う。


「魔棍とやらの力はその程度なのか?」

「肩慣らしに決まっているだろう。ここからだ」


 ミゲイリは深呼吸すると魔棍リジルに力を籠める。すると先端の黄色の宝石が琥珀のような美しい光を放つ。


《岩石付与》


 ミゲイリがそう唱えた瞬間、魔棍リジルの先端に岩が集まっていき、やがて巨大なハンマーのような形状となる。


 おいおい、あんな付与魔法が存在するのかよ。聞いたことないぞ。

 俺が面食らっているとミゲイリがそれを察したかのようにさきほどの言葉を復唱した。


「言っただろう。土属性の魔法を強化すると」


 ミゲイリは土のハンマーを大きく振りかぶった状態で凄まじい踏み込みでこちらに突進してくる。


 前と同じようにレーヴァテインでハンマーの殴打を防ぐも威力を殺しきれず遥か後ろに吹き飛ばされてしまいそのまま壁に激突する。

 大きな轟音と土煙に包まれ地下室は静寂に包まれる。

 一人残されたミゲイリは土煙に包まれた壁に向かって返答が来ないであろう言葉を投げかける。


「油断のし過ぎだ。他人を虐げていいのは自分だけではなかったのか?」

「確かにその通りかもしれぬな」


 しかしあろうことか返答は帰ってきた。その壁からではなく後ろから。


ミゲイリが見ていた壁の場所に既に俺はいなかった。

 とっくのとうに俺は体制を立て直し動き始めていたからだ。


 後ろを振り返ったミゲイリの顔は明らかに焦りに満ちた表情をしている。


「どうした?まさか今の一撃で俺様が死ぬとでも思ったのか?」

「き、貴様……今の一撃を受けてなぜ……!」

「あのくらいの攻撃を俺の剣が受けきれぬわけがなかろう」


 俺は地下室をこつこつとゆっくり歩き回るとレーヴァテインで二回ほど素振りをして肩慣らしをする。何故なら今までのはただのお遊びでここからがレーヴァテインの本領であるからだ。


「こちらも貴様を見くびりすぎてたのは事実だ。そちらがいいものを見せてくれた礼に少しだけ見せてやろう。光栄に思うが良い」


 俺はレーヴァテインを構え集中し、我が相棒に一つの指令を出す。


《レーヴァテイン 魔剣開放 2%》


 レーヴァテインは赤黒い輝きを放ち、地下室中に衝撃波を放つ。並みの人間ならこれだけで気絶するだろう。


「なんだ……なんだその力は……!?」

「行くぞ」


 俺はレーヴァテインを振りかぶり横薙ぎを行い飛ぶ斬撃を放った。

 ミゲイリはその攻撃を土ハンマーのヘッドで防ぐ。


 しかしあまりの威力に圧縮された土でさえ破壊され、後ろの壁には凄まじい切断傷が生まれた。さながら巨大な竜が爪で壁を引き裂いたのごとき威力。

 すぐさま起き上がり俺と距離を取ったミゲイリ。


「一体その魔剣にはいくつの力があるんだ……!だが、そろそろ限界だろう!」


《竜裂きの千本槍》


 ミゲイリが土魔法を唱えると周囲から無数の岩の槍が次々とまるで嵐のように俺の心臓に目掛けて飛んできた。


 その様子はさながら隕石群のようだった。

 いくらレーヴァテインの威力をもってしてもこれを全て空中で防ぎきることは不可能。


 ――だが、レーヴァテインにはまだ俺が見せていない力がある。

 俺はレーヴァテインにもう一つ指令を出した。


《魔剣の波動》


 力を開放した時以上の衝撃波を放ち全ての土の槍を破壊する。


「なんだ……なんなんだお前は……いや、その魔剣は一体……英雄が持つ剣でさえ能力は二つ三つ程度だというのに……なんなんだそれはぁああ!!」


 ここまでなんとか平静を保っていたミゲイリだったがここへきてようやく限界が来たらしい。俺は前に出てレーヴァテインを構える。

 冥途の土産に教えてやろう。

 ……って口に出したらフラグだから言わないでおく。


「教えてやろう、この剣の名は……」


 俺はミゲイリが攻撃を仕掛けてくる前に飛び出し斬撃を繰り出した。


「魔剣レーヴァテインだ!!」


 俺はミゲイリの左脇腹を切り裂いた。

 今度は土魔法でも防ぐことはできずそのままミゲイリはその場に倒れこんだ。


「がはぁっ……!!」


 終わったな。さて、魔導書を回収するか。

 そう思っていると倒れていたミゲイリはまだ意識があったらしく話しかけてくる。


「成程……魔剣レーヴァテイン……か」

「なんだ貴様、俺様の相棒のこと知っているのか?」

「知っているとも……」


 やはりこれだけの魔剣なのだから名前を知っている者がいても不思議ではないか。

 情報を引き出しておくべきか……?


「貴様……魔王になると言ったな……本気か……?」

「当然だ」

「くくくっ……魔剣レーヴァテインの新たな所有者は……魔王を望むものか……」


 血を吐きながらも心底愉快そうに笑うミゲイリ。


「その魔剣で……魔王とやらになってみるがいい。できるものならな……」


 ミゲイリのその言葉と共に魔導書のあった地下室は崩壊する。


「貴様に言われずともそうするさ」


 地面に一冊の本が落ちていた。おそらくこれが禁忌の魔導書だろう。……合ってるよな?

 魔導書とついでに魔棍を回収すると俺はその言葉と共に地下室を後にした。



◇魔棍レジル

武器種:棍

能力:土属性の魔法を強化する。

代償:土属性魔法以外の攻撃魔法が使えなくなる。


◆魔剣レーヴァテイン

武器種:剣

能力:装備者に魔力供給。

 装備者の身体能力強化。

 衝撃波発動可能。

 ???????

代償:装備者の望みを逆の形で叶える。力を開放すればするほどこの呪いは強くなる。

 一度装備した場合、装備者が死亡するまで呪いは解呪されない。

 捨てようとしても装備者のところに自動的に戻ってくる。

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