【完結】大虐殺の魔王を目指す俺が「装備者の望みを逆の形で叶える呪い」を持った魔剣を抜いた結果魔王どころか英雄になってしまう話
12話 クラス分け初日でどのくらい周りと話せるかが陰キャと陽キャの分岐点といっても過言ではない
12話 クラス分け初日でどのくらい周りと話せるかが陰キャと陽キャの分岐点といっても過言ではない
入学式が終わると、クラス分けの表が壁に貼られていたので見に行く。
ちなみに護衛となる騎士を志望している者は自動的に同じクラスに入れられるので俺とメアは同じクラスのようだ。
今日のカリキュラムは午前はクラス分けと自己紹介と簡単な魔法の基礎的な授業。
昼休みをはさんで模擬戦場で剣術の訓練を行う、か。
魔法も剣術も既に独学で学びつくしている俺にとっては子供のお遊びのようなものだろうがきちんとした基礎的な授業を受けることで見識を広めることもできるだろうしここは大人しく授業に参加することにするか。
****
指定されたクラスの教室へと向かうとU字の形をした広い講義室で、後方に向かい階段状に上がっていく座席が配置されていた。
一つめの教室でこの大きさとは本当にでかい学校なんだな。
クラスの教室に行くとあちこちで生徒たちが和気あいあいと話しているのが見える。
自己紹介をしあって親睦を深めているのだろう。
特に座席の指定はなく席は自由に座っていいらしいので俺はメアと後方の左後ろあたりの席に座る。
ふと左側の方を見ると入学式で見た青髪ロングのクールな少女がいた。
ここは軽く挨拶をして交流をしていこうではないか。
この学園で真面目に配下を見つけようと思うのならばコミュニケーション能力は非常に重要だ。
魔王とはいえここで「俺は孤高な存在だ」とか言って誰ともしゃべらずにいると前世の時の俺みたいになる。
決して自虐じゃない。何故なら前世では魔王が実現不可能だったから会話する必要がなかったんだ。
この世界では魔王を目指せるからこそちゃんとコミュニケーションしてクラスメイトと交流を深める必要があるからだ。
覚悟を決めた俺は青髪少女にさわやかな笑顔で話しかけた。
「俺はスルトだ。よろしくな」
しかし青髪少女は横目で俺のことをちらりと見ただけでそのまま読んでいた本に目を戻してしまう。
返事もうなずきもしない。
「……なぁ、俺なんか間違った?」
俺はたまらずメアの方を向いて参考意見を聞いた。
どうしても前の世界の知識が後を引きずっているので気づかないうちに失礼な態度をとってしまっていたのかもしれない。
ついさっきドン引きされないように学園では最初は普通の生徒を装うと決めたばかりだというのに。
こういう時メアの意見は参考になる。抜けているが案外常識人だからな。
「人見知りなんじゃない?」
メアはそんなことを言う。
ということは少なくとも俺の接し方自体は間違っていないということになる。
ひとまず安堵した。
「あ、隣同士だね。よろしく~」
メアと話していると右側に隣に座った女子が気さくに話しかけてきた。
何か知っているかもしれないと思い俺は青髪の子について聞いた。
「俺の左隣にいるあの青髪の子について何か知らないか?」
「あぁ、あの子?確かエイルって名前だったかな。風の噂によれば剣術に重きを置く貴族の家庭に生まれたけど剣術があまり得意じゃないらしくてね。それで落ちこぼれって言われているらしいよ」
なるほど。ということはあの不愛想な態度は警戒心故ということか。
おそらくずっと落ちこぼれと蔑まれ続けたのだろう。
むしろこれは好都合だ。こういう奴ほど自分の中で反逆精神を秘めていてちょちょいのちょいと俺が優しくしてやればころりと言って忠誠を誓ってくれるはずだ。
将来俺の部下となる人間の候補は多ければ多いほどいい。
俺はそんなことを考えながら頭の中の魔王計画書に新しい記述を追加するのだった。
早くメモしとかないと忘れるし誰も見てないところで魔王計画書を取り出さないとな。
しばらく待っていると予鈴が鳴りこのクラスの担当の先生が教室に入ってくる。
魔女っぽい感じの黒いとんがり帽子をかぶり、橙色のカールの髪に眼鏡をかけ、服装は先生がたが皆着ている先生用の学園制服を身にまとっている。
「入学式でも顔を見たと思いますが私は魔法学を専攻していますアマンダと言います。皆さん分からないことがあったら気軽に聞いてくださいね!」
典型的な良い先生って感じだな。
生徒達も盛り上がりあれこれと先生に対する質問を投げかけている。
「それでは魔法学の授業を始めますね。まずは四大属性について……」
こうしてしばらくの間退屈な授業が続いたのだった。
あまりにも退屈すぎて眠りこけてたら横でメアも一緒に寝始めてまとめて先生に怒られた。
くそっ、一緒にサボるのはいいがどうして寝息をかきながら寝るんだ。ばれるだろ。
****
授業が終わり昼休みを告げる学園の鐘が鳴り響いた。
俺とメアは学園の食堂に行くことにした。
この学園は数ある魔法学園の中でもトップクラスに大きいだけあって食堂もかなり大きい。
授業で森で指定された獣や魔獣の討伐があるらしいがそれで狩られて運ばれてきた肉がこの食堂で使われているらしい。
何よりもありがたいのがメニューはどれも無料だということだ。
正直こういうファンタジー的な料理はかなり夢に見ていたのでそれが無料で食べ放題というのは非常に嬉しいものだ。
俺は気になった「ドラコ肉のはちみつ焼き」というのを注文した。
ドラコというのは小さな竜の一種らしい。
竜と言えば伝説上の生き物のイメージが強いがどうやらこの世界において竜というのは広義的なものらしく無害な小さな竜と呼ぶし、ひとたび現れると町の一つや二つ簡単に灰にするような凶悪な竜も全部ひっくりめて竜と呼ぶらしい。
このドラコというのはどうやら無害な竜を改良した食用の竜のようだ。
メアも隣で「同じものを」と言って俺とお揃いのものを注文していた。
どこの席に座るかと考え食堂の中を見渡していると例の青髪の不愛想、エイルが一番端っこの席で一人寂しく野草がたっぷり乗った健康的なサラダを貪っているのが見えた。
避けられているのか本人が周りを拒絶しているのかは分からないが周りの席には誰も座っていないし座ろうともしなかった。
これは好機だと思い俺はエイルの向かい側の席に座った。
「失礼するぞ」
「……何か用」
「用がなくちゃ一緒に飯食っちゃいけないのか?」
エイルはそっけない態度を取るが俺は一切意に介すことなく両手を合わせて食べ始める。
そう、例え魔王だとしても生き物を頂くことには感謝すべきなのだ。
俺の横でメアも同じように両手を合わせていただきます、と言って食べ始める。
この世界にはそういった習慣はないのでこれをやっているのは日本出身の俺と俺の真似をしているメアだけだ。
向かい側に座っていたエイルは俺たちの動作を見て首をかしげていた。
「それ、なんなの?」
「俺の故郷の習慣だ。飯を食う時は両手を合わせていただきますというんだ。食べるという行為は命を頂くということ。そのことに感謝をしてから飯を食うんだ」
「変わった習慣ね。初めて見たわ」
「そうだろうな。俺も俺以外やっているのを見たことが無い」
横に座って肉をほおばりながら頬っぺたを抑えて恍惚とした表情を浮かべているメアは例外だが。
そんなに旨いのか……
早く口に入れたいところだがひとまずエイルとの会話が優先だ。
次の言葉を考えているエイルの方から先に口を開いた。
「どうして貴方は私に関わろうとするわけ」
「お前から魅力を感じてな」
「魅力?なに、私に惚れでもしたの」
「まさか。魅力っていうのは隠された才能のことさ」
この俺がわざわざ褒めてやったというのにエイルは不機嫌そうな顔をして小さくため息をついた。
こちとら魔法試験あんど筆記試験首席様やぞ。もう少し喜んでくれてもいいんじゃないすかね。
「笑わせないでよ。貴方も知ってるでしょ。私が落ちこぼれって言われてること」
「そんなものは他人から評価だろう。俺は俺自身が見たものしか信用しない主義なんだ」
「馴れ合いは嫌い。私に構わないで」
そういうとエイルはさっさと食事を平らげて椅子から立ち上がると器を持ってさっさと席を立ってしまう。
あれ、もしかして何か失敗したかな。
個人的にはきざっぽい雰囲気を出しつつもそれでいて何かを見抜いているようなしぐさをすることで「この人なら……もしかしたら私のことを分かってくれるかも……」という風に思ってもらう予定だったんだが。
「メア、俺はどうしたらいいと思う?」
「スルトはエイルちゃんと仲良くなりたいの?」
「うん」
厳密にいうと仲良くなりたいとは違うのだが細かいことを言うと面倒だから一応うなづいておく。
「でも話に付き合ってくれたってことは全部が嫌だったってわけじゃないんじゃない?」
「すなわち?」
「根気よく続けてたら心を開いてくれるかも」
「なるほど」
なんて頼りになる奴だ。
流石は俺の側近第一候補だ。
そうと決まればもっとアタックして奴の心を溶かしてやるぞ。
魔王というのは諦めが悪いものなのだ。
例え俺がくじけても俺の心の中の第二第三の魔王が現れるからな。
「ちなみに聞きたいんだけど」
メアがその言葉を発した瞬間、突然メアの雰囲気が変わった。
背後には闇魔法の如き暗黒なオーラを身に纏い、にっこりと笑ってはいるものの目が笑っていない。
俺の腕を掴んでいるが一歩間違えたらそのまま腕を握り潰しそうな勢いだ。
「スルトはエイルちゃんのことが気になるの?」
メアが俺が女の子に近づこうとするとたまにこうなる時がある。
正直怖い。魔王だから怖がっちゃいけないんだけどすごく怖い。
「な、何を言っている。俺は色恋などに興味はない。奴の才能を見抜いたまでだ。もしかしたら俺の配下になる力を持っているかもしれん」
「配下……本当にそれだけ?」
「当然だ」
「ふぅん。ならいいけど」
纏っていた不穏なオーラが一瞬にして消えさった。
まさかとは思うがメアも闇魔法の使い手じゃないだろうな。
メアの暗黒のオーラに気圧されたもののなんとかその場を切り抜け、俺は皿の上にのったドラゴンの肉料理を平らげたのだった。
正直めっちゃ旨かった。俺が魔王になったらいつでも食えるように料理人を配下にするもの悪くないな。
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