7話 守秘義務とかコンプラはどうなってんだ魔法学園は
夜遅くまで魔物たちと戯れていたこともあり睡眠時間が足りずなかなか起きれなかったが今日は欠かすことのできない日課があったため必死に頭を覚醒させ準備をしてその場所に向かった。
俺の住むローア村はワインの特産地として有名なので当然酒場もある。
王都にも販売しているが、ここでしか飲めない酒や取れたての果物やワインを味わいたいという人間がたくさんいるので結構な数の観光客が訪れる。
そういった観光客から色んな情報を得れるので俺はよく酒場まで足を運んでいた。
酒場の扉を開き、カウンター席の左端の席に腰掛ける。
俺が来たことに気づいた酒場のマスター、筋肉隆々でハゲであごひげを生やしたこの男が俺に馴れ馴れしく話しかけてくる。
「おう坊主。また来たのか。ブードジュース用意してあるぞ」
情報集めとは言えまだ酒は飲めないのでジュースで時間を稼ぐのだが。
いつの間にか俺は領地で取れるブードジュースが好きな可愛い男の子みたいな風潮が酒場内でささやかれてるみたいで少々腹立たしい。
そんなことを考えていると、カウンター席の右端に座る見慣れない服装の男がいるのが見えた。身なりがよく貴族が着るような上質な生地だが、ローブのようにも見える。魔導士か何かだろうか。
そう考えながらその男の様子をうかがっているとマスターが俺が気にしていることに気が付いたようで教えてくれる。
「あぁ、あの人は王都のルーン魔法学園から来た先生だってよ。飲みすぎんなって言ったんだがな……」
魔法学園の先生だという男は顔を真っ赤にして上機嫌に隣に座っている客に絡んでいる。よくよく見ると席には空になったワインの瓶がいくつも転がっている。
ああいう酔っ払いは関わると面倒だ。こっちから関わらなければ絡まれることもないだろう。
そう思っていたのだが、魔法学園の先生の口から聞き捨てならない情報が耳に入った。
「実はな、ルーン魔法学園の地下には禁忌の魔導書っていうのが封印されていて、その封印を解くとあたり一帯が滅ぶって言われてるんだよ」
「そんなの噂でしょう?」
「馬鹿言え、それを手に入れたものは魔王並みの力を得れるらしいんだよ!」
「ははは、酔いすぎじゃないですか?」
「なんだお前、信じてねぇのか?」
それを聞いた俺はマスターに注文を入れた。
この機を逃すまい。
「マスター、ワイン一杯お願いします」
「何を言ってる、お前の年齢じゃ飲めねぇぞ。ターシャさんとレイモンドさんに叱られちまうよ」
「飲むのは僕じゃないから大丈夫」
渋々ワインをコップについだマスターからワインを受け取り、俺は魔法学園の先生だという酔っぱらいに近づく。
俺が近づいてきたことに気づいたその男は不機嫌そうな顔をして俺につっかかってきた。
「あ?なんだ坊主。酒場はお前のような子供が来る場所とこじゃ……」
すかさず俺は目の前にワインの容器を差し出す。
「僕のおごりです。どうぞ」
「お、おぉ……なんだ、分かってるじゃねぇか」
「その話、詳しく聞かせてくれませんか?」
「いいぜ、教えてやろう」
俺が酒を差し出したことと話に興味を持ってくれていることに気分がよくなったのか男は足を組んで演説するかのように意気揚々と語り始めた。
「お前も魔導書は知ってるだろ?読むとスキルを得られる特殊な本だ。
学園に封印されている魔導書はそれらより更に上の、魔魂スキルが得られるものらしいんだよ」
「魔魂スキルとは?」
「そんなことも知らねぇのか?よし、この俺様が教えてやろう。まずスキルは神がきまぐれで人や魔物に与えると言われる特殊な力だ。
普通の魔法や剣術との違いはスキルは脳じゃなくて体に刻まれるから、スキルを発動してしまえば剣術スキルなら剣術を訓練する必要もないし、魔法スキルなら魔法を詠唱する必要がないということだ。だからこそスキルを入手できる魔導書は価値が高く高値で取引される」
「ふむふむ」
「魔魂スキルはスキルの上位互換だ。スキルとは比べ物にならないくらい強力なスキルを秘めている。
かつて魔魂スキルを持った者は魔法一つ唱えるだけで辺りの地形を変え、剣を振るだけで大地を切断したそうだ。
それだけじゃねぇ、魔魂スキルは特定の部位に宿ることもある。目に宿れば魔眼だし、剣に宿れば魔剣だ」
なるほど。ということは俺の持っているレーヴァテインにも何か特殊な魔魂スキルが備わっている可能性があるということか。時間のある時に調べてみる必要がありそうだ。自身の持つ力を正しく把握しておくというのもの大事なことだ。
「俺は学園長がこっそり話しているのを聞いちまったんだよ。あんな堅物の学園長が嘘を言うわけねぇ。これはきっと本当のことだ。きっと学園の地下にはそんな最強の魔導書が封印されてんだ。学園はその事実をもみ消してるんだ」
「ありがとうございます、勉強になりました」
「おい、これだけの情報を聞かせてやったんだから、分かってるよな?」
「分かってますよ。マスター!この偉大な先生にワインをもう一杯!」
「へいへい、これで最後にしろよ」
マスターは渋々ワインをコップにつぎ魔法学園の先生に差し出した。
ワインくらいで済むなら安いものだ。この情報は普通に手に入れようと思ったら俺の今の小遣い程度じゃ到底足りないだろう。
最高の情報を得た。そうなればこれからやることは決まりだ。
――最初の標的は魔法学園。そして禁忌の魔導書を奪い取ることだ。
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