2話 魔剣を抜きし者は勇者か、魔王か、もしくはただの中二病か
5歳の頃から俺は村のすぐ近くにあるこの森で俺は毎日のように鍛錬をしていた。
本来はここは子供は立ち入り禁止なのだが、幼少期の時点で隠れて魔法についての本を読みふけり魔法の練習をしていた俺にとってこの森で魔物が出てきたとしても俺の敵じゃない。
魔法と言ってもこの村で読める魔法の本は基本は生活に少し役立つくらいの初級魔法、学べたとしても小さな火の玉を飛ばしたりできる下級魔法程度だ。まぁ俺の魔力と制御術があれば下級魔法程度でも以前両親に見せたくらいの岩を粉々にするくらいの威力は出せるのだがな。
とはいえもっと上の魔法を学ぶためにも魔法学園という選択肢は悪くないかもしれない。
女神からの特典があるからだろうが、俺は初めて使った段階で中級魔法なみの魔法を使うことができた。
とはいえいきなり実力を見せすぎても脅威と見られ魔女裁判にかけられるかもしれないと思い森でこっそり練習している。
確かに女神の言ってた通り四代属性全てに適正があるようだ。
普通の魔法使いなら一つか二つの魔法を中級魔法まで使える程度で、適正の無い属性魔法なら使えても初級魔法まで。
三つ以上の属性魔法を中級魔法まで使えることは少ないようだ。
しかしそんなことよりも重要なことがある。
家の本棚の隅にあった御伽噺に書かれていた属性魔法。
それは魔王やごく一部の魔物にしか使えない闇属性魔法と、ごく一部の英雄にしか使えない光属性魔法。
俺はその二つの魔法にすら適正があった。
闇属性魔法はいいんだが、光属性魔法は正直いらなかったかもしれない。なにしろ俺は英雄になりたいわけじゃない。
光といったら英雄ってイメージ強いしな。
とにかく闇属性魔法を徹底的にためしてどんなことができるか実験をしている。
火属性魔法のように弾にして飛ばしてみたり、飛んでくる攻撃を闇で防いでみたり。
まだまだ絵的にしょぼいのでもっと強く尚且つ派手にしていきたいところだな。
いつも俺はここで剣術や魔法の鍛錬をしている。
今日もいつものようにとある場所で剣で木を切りつけたり壁に魔法を当てて鍛錬をしていた。
今日の分はこのくらいで十分かと思いその場を去ろうとした時。
来いと、呼ばれているような気がした。
何に呼ばれたのかは分からない。
しかし、森の更に奥からそんな声が響いてくる。
引き寄せられるように俺は声の元を目指す。
そしてしばらく進むと小さな洞窟があった。
入口には立ち入り禁止の看板が建てられボロボロの木の板が雑に打ち付けてあり少し力を入れるだけで簡単に外れるくらい腐り果てていた。
怪しいとは思ったが好奇心には逆らえず俺は洞窟の中へと入った。
俺は魔法で小さな明かりをつけながら洞窟の奥へと進んでいく。
この洞窟は大昔に崩れて入れなくなったと聞いていたのだが、不思議なことに小さな通り道ができており俺はその隙間を縫って先へと進んでいく。
生き埋めになったりしないかとも思ったがそんなことがどうでもよくなるくらいに俺は洞窟の奥に引き寄せられていた。まるで何かの魔力でもあるかのように。
洞窟の奥にたどり着いた。
洞窟の奥には剣の台座が鎮座していた。
そしてその台座に刺さった剣。
真っ黒で闇の力を纏っているのが分かる。
その剣を見た瞬間俺は確信した。間違いない、この俺はこの剣に呼ばれたのだ。
この直視できないほどの闇のオーラ。
将来魔王となる俺のために存在する剣だ。
俺は武者ぶるいをしながらゆっくりと剣の柄に触れた。
すると気圧されそうなほどの黒い衝撃波が洞窟中に駆け走った。
この剣は俺のことを試しているとでもいうのか?
まるで暴風を真正面から食らっているような衝撃で立つのもやっとだ。
なんとか気圧されないように柄を掴む手に力を入れる。
すると剣から何か言葉のようなものが伝わってくるのを感じる。
お前の望みはなんだ。
そうか、そういうことか。
俺の望みはただ一つ。
俺はその野望を剣に込める。
「俺はこの世界に混沌をもたらし、魔王となり、人類を破滅させてやる!」
そう叫ぶと剣が放つ黒い衝撃波がひと際強くなった後、静かになった。
だが俺には分かる。
俺の野望を感じ取って俺の主だと認めたのだろう。
俺は改めて剣の姿を見る。
黒いオーラを纏い毒々しい紫をしたその剣の恐ろしい外観を……
剣を手にした時、一つの言葉が俺の中に響いたのを感じた。
魔剣レーヴァテイン。そうか、それがお前の名か。
「まさに、魔王たる俺にふさわしい剣だ」
俺はその魔剣を手に持ち洞窟を後にしたのだった。
****
ここで一つの呪いの剣の話をしよう。
その剣はレーヴァテインと呼ばれた史上最も強大で、恐ろしい呪いを秘めた剣だった。
20年前大陸を地獄へと変えた魔王がいた。
人々には知られていないことだがその魔王は元々人間だった。
それも本来は英雄と呼ばれたとある王国騎士団長が何の前触れもなく突如反旗を翻し、国を乗っ取ると魔族や魔物を引き連れ戦争を仕掛けた。
これが魔王の誕生とされている。
その魔王誕生の裏にはレーヴァテインの存在があった。
レーヴァテインは「装備者の望んでいることを全く反対のことに物事を進めさせる」という世界の運命にすら干渉するすさまじい呪いを持っていた。
かつてその剣を手に取った騎士団長は「悪を成敗し世界に平和をもたらす」という望みを持っていたことで「善人が死に絶え、世界が戦争に向かう」ように導いてしまう。
どんなに願っても人を殺す方向に物事が進んでしまうため騎士団長はやがて狂いそのまま意識と体を魔剣に乗っ取られて完全に魔王になってしまった。
魔王誕生から15年経過し、英雄たちによって魔王が倒され、戦争が終わったことでその剣は洞窟の奥深くに封印される。
しかし付け焼刃で雑な封印だったこともあり、すぐに封印が解け始めレーヴァテインは次なる使用者を呼び込んだ。
それが異世界から転生した男、スルトだった。
彼の願いは「世界に混沌をもたらし魔王となり人類を破滅させる」
そして呪いは発動した。
「世界に平穏をもたらし英雄となり人類を平和に導く」方向に。
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