メイソン&ハムリン『CC』

第190話

 アメリカのピアノ。それを挙げるとなると、まず最初にくるのが『スタインウェイ』。ピアノの王、と呼んで差し支えない性能と知名度。ピアノを弾かない人でも、この名前を聞いたことがある人は多い。実際には『ニューヨーク』と『ハンブルク』という二種類があるのだが。


 主要なコンクールでは、ピアニストは用意された数種類のメーカーの中からピアノを選ぶわけで、その中には必ずスタインウェイは入ってくる。コンクールによってはスタインウェイのみ、というものもあり、その絶対的な位置は揺らぐことがない。


 ならば、その王の威光を恐れてアメリカでは他にメーカーは存在しないのか、というと当然そんなわけはない。すでに存在しなくても、一九世紀頃から増え続け、その代表的なメーカーは技術者やピアニストではなく、家具屋や教師などが立ち上げたりもしている。


 アメリカのピアノの特徴。それはヨーロッパの主要なメーカーですらやっていなかった、革新的なアイディア。良し悪しはあるが、その中でも最も面白い進化を続けたのが『メイソン&ハムリン』である。

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