Episode5:Fragrance like home

第22話 Fragrance like home - A

 船に帰還してからというもの、寄生型エーテルノイドの戦艦に居た影響で、私とフィラースは1週間も検査を受けることになったのだ。


また、スカウターは寄生型エーテルノイドに汚染されている可能性からオーバーホールを行うことが決定された。1年かかることを覚悟したが、パーツ分解、洗浄、検査諸々は自動化されていて、一月で終わるそうだ。


 しかし、一月出撃できないのはかなりの痛手である。現在、第2話の合同訓練編を色々あってスキップしてしまった。このことにより、アニメ時点以上に、第3部隊の結束が弱くなっている。


 第3話まで、あと3週間。


CELESTIAL NEXUSで、仲間が最初に死ぬのは第5話だが、第3話には第5話に出てくる作中最強クラスのエーテルノイド、アクアロイド戦の伏線がある。それを早めに回収して、第2部隊の全滅を回避しなくては。


 まず、第3話で登場するアクアロイドは、水中で初めて発見されたエーテルノイドだ。見た目は巨大なゲンゴロウといった様子だが、水中に入ると視覚的に透明化する。


 元々、アクアロイドはAI潜水艦だったそうだ。それが、エーテルノイドに取り込まれて、エーテルノイドはAI潜水艦と融合し、アクアロイドとなった。その為、アクアロイドは光学迷彩、ミサイル、魚雷などを持っていて、その上、硬い装甲で覆われている。今まで、多くのパイロットたちがアクアロイドによって命を落としてきた。


 エーテルノイドはAI兵器と融合する。その為、人間はエーテルノイドと戦う時はエーテルノイドに抗体を持ち、取り込まれても利用されることのない人が操縦する兵器を使わざる得なくなった。


 CELESTIAL NEXUSファンブックによると、GHMにAIが使われていないわけではないが、今までの研究から、人が操縦する兵器を取り込んでも、エーテルノイドは融合したところでそれを扱えないことが判明している。


 これは、エーテルノイドには知性が無いからと言われている。 逆に、AIと融合したエーテルノイドはどうかというと、AIを取り込むことで知性を獲得するらしい。


 また、200年程昔、エーテルノイドが登場し始めた頃に、アンドロイド達が世界中で反乱を起こし、北米にノヴァティック共和国を成立させたことから、世界的にAIの使用は規制の方向に向かっていったこともあり、現状、AIは姿勢制御や照準アシスト程度にしか使われていないそうだ。

 

 話はアクアロイドに戻るが、このアクアロイドの元となったAI潜水艦の設計図データが、第3話に出てくるノックスという町の地下にある廃工場にある。


 アニメでは、エレクティオプテラという体長5mほどの巨大な蜻蛉のようなエーテルノイドを追跡中に廃工場に入るのだが、設計図データのホログラムがその時、画面端で見切れた状態で登場する。


 廃工場はその時、戦いのせいで崩壊するのだが、ファンの間では、あの時、あの設計図データを回収していたら、何かしらアクアロイドの弱点を見つけられて、あんな第2部隊が全滅する悲劇は起きなかったのにとよく語り草にされる伏線だ。


 現状、スカウターで出撃できない私は、その戦闘に参加できないので、設計図データの回収は不可能。そこで、今回は他の3人に回収を頼みたいのだ。


 しかし現在、第2話をスキップした影響で、お互い、入学式当日のクラスメイト同然の状態。そんな中で、突然、私がこの後アクアロイドと戦うので、潜水艦の設計図データを取ってきて、と言っても、誰も依頼を受けてはくれないだろう。


 その為、残り3週間以内に私がするべきことは、まずは第3部隊の皆と仲良くなること、そして、アクアロイドとAI潜水艦の繋がりを証明することの2つだ。


 アクアロイドと潜水艦の関係性を明らかにすれば、きっと仲良くなくても、回収する必要があると示せる。


 もし、この二つとも達成できなかったら、その時は、生身でエレクティオプテラの居る廃工場に行くしか無い。どうせ、ここで頑張らないと、第2部隊全滅、戦力不足による基地襲撃、政府との全面戦争の勃発、全滅エンドという流れなので、どちらにせよ死ぬ。死にたくないなら、意地でもデータを入手しなくては。


 長かった検査が終わり、漸く今日の夕方ごろに解放された。明日から、訓練を再開しなくては、ここ1週間で落ちた体力の回復が次の出撃まで間に合わないだろう。


 建物から出ると、見覚えのある大男二人が出迎えてくれた。勇一とディヤーだ。


 フィラースを助けるために戦艦に乗り込んだ時のことは、既に報告書を書いているのだが、何か不備があったのだろうか。

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