第18話 Calling Out To You - C

 そういえば、どうして勇一は訓練所に来ていたのだろうか。毎回、午後6時には持ち場に戻ると言って、どこかに行く。アニメでは、第1部隊の動きは描かれていなかったが、訓練所に来ていることは描写されていなかった。


 それに、テクストライクス最強、いや、アクシス・ソブリン軍最強である第1部隊がどうして、ここに来ているんだろうか。仮に、エーテルノイドの襲撃だとすると、ここまで静かなことはおかしい。


 となると、誰かの護衛だろうか。しかし、護衛なら他の部隊でもあり得る。それをしないと言うことは、つまり、テクストライクス内々で処理したい護衛任務ということか。


 しかし、誰を守るのだ。私が7号機のパイロットであることは、ばれていないはず。そうなると、一体、誰の為に第1部隊はここに来ているんだ。


 その夜、銃声で目が覚めた。


 カーテンを開くと、訓練所にある巨大倉庫の中から黒光りする巨大な人影が見えた。ストームブレイカーだ。


 倉庫の奥の裏門辺りから火の手が上がっている。そちらにも、黒い影が見えた。遠すぎてよく見えないが、GHMであることは間違いないだろう。


 すぐにサイレンが鳴り響き、私たちには避難命令が下った。直ぐに支度をして、地下から鉄道に乗って避難する。しかし、列車の中にフィラースの姿は無かった。


 鉄道を何度か乗り換えて、テクストライクスの基地に着くと、直ぐに司令に呼び出された。


 指令室には既に、司令であるディヤー、煌、柳の姿があった。他に、技術班長の周、情報分析官のムハンナド、第2部隊の賢、セレナ、タリクの姿もあった。


 しかし、フィラースの姿はどこにもなかった。一体、何が起きていると言うのだ。


「これで、全員だな。諸君に緊急任務がある。今回、エーテルノイド・ドメインから襲撃があった。場所はアラウンド・メガラム訓練所、敵はEAG4機、人造エーテルノイド3体、飛行戦艦1隻だ。敵の目標は、フィラースの確保だ。既に第1部隊が対応に向かっているが、既に2機が大破している。諸君には、第1部隊の援護に向かってもらいたい。事態は緊急を要する。直ちに作戦を開始しろ」


 疑問は全て胸にしまい込み、任務に集中することにする。臨時で謹慎を解除されたが、条件として、機体装備は整備班に一任することとなった。恐らく、今回は偵察機としてしっかり仕事しろとのことだろう。


 直ぐにスーツに着替え、スカウターに搭乗する。そこで、作戦の詳細情報を知ることができた。


 今回の第3部隊の目的は、第1部隊が拘束をしているので、第2部隊と共に敵を包囲することだ。第2部隊は空中から、私たちは地上から包囲に向かう。敵機であるEAGシリーズは空中及び宇宙空間での戦闘に特化している為、私たちは高い確率で主に人造エーテルノイド、ニキシードローンとだけの戦闘になるそうだ。


 提供された情報によると、ニキシードローンはハエのような見た目のエーテルノイドであり、人造である為、青ではなく赤く光っているそうだ。鋭い顎で噛みついてきて、装甲を貫く特徴を持っていて、かつ、自己修復能力があるらしい。


 CELESTIAL NEXUS全話に登場しないエーテルノイドだから、詳細についてこれ以上は一切わからない。


 エーテルノイド・ドメイン共和国は、アクシス・ソブリンと小さい海を挟んで西にある国だ。メインストーリーにはあまり関係しないが、人造エーテルノイドの件でアクシス・ソブリンと現在、関係が悪化していることが語られていた。

 

 何故、そのエーテルノイド・ドメインがフィラースを狙うのだろうか。しかも、アクシス・ソブリンの中心に進攻するというリスクを冒してまでだ。それに、普通なら飛行戦艦が国境を越えた時点で、アクシス・ソブリン軍が対応に向かうはずだが、何故、エーテルノイド・ドメインの奴らがここまで来れたのだろうか。


 疑問は絶えないが、今、考えても仕方が無いか。


「作戦地点に到着、各員、発進!」

「「「了解!」」」


 作戦地点は訓練所から北に100km離れた森の中だ。アストロフィア号は森の中にある崖の陰に停泊した。第3部隊はそこから発進する。


 今回は、最初から人型の状態で発進となった。今回は地上戦なので、こちらの方が都合がいいからだ。


 レーダーでニキシードローンの反応を探しつつ、訓練所の方角に向かって進む。今回はステルス有りの状態である為、単騎で先行している。もし、万が一、敵にばれて先頭になった場合、二人が到着するまで少ない武装の上に、一人で戦うことになる。


 今までの人生で、一人で戦うことなど無かった。本来、7号機は遠距離支援型で、制圧力が高い一方、機動性が無い為、他の機体が陽動として動いて、そこを撃つ戦闘スタイルだ。その為、機動力の高い6号機と常にセットだった。


 彼女が亡くなった後は、6号機を誰も操作できなくて、7号機が6号機の分まで運用されるようになって、結果、あの日は敵機相手に自爆まがいの攻撃をすることになって、死んだんだっけな。


 操縦席の前方にあるレーダーの緑色の画面に丸い影が映った。エーテルノイドを検出するレーダーに掛かったとなると、ニキシードローンだろう。


「こちらスカウター。エーテルノイドをレーダーで検出しました。位置は南南西、距離約10km、数は3です。ニキシードローンと思われます。データを共有しておきます」

「こちら司令部、了解。総員、戦闘態勢に入れ。スカウターは、その場で待機、アイスブリザードとデイブレイカーは接近を続けろ」

「こちらスカウター、了解」

「こちらアイスブリザード、了解」

「こちらデイブレイカー、了解」


 エーテルノイドレーダーの隣にある青いレーダーの方を確認すると、後方から2機近づいているのが見えた。柳と煌の二人だ。他にレーダーに映っている機体は無いから、ニキシードローンとだけの戦闘になりそうだ。


 その時、南の方で、花火を複数打ち上げた大きな爆発音と共に辺りが昼間のように明るい光で包まれた。

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