Episode4:Calling Out To You
第16話 Calling Out To You - A
基地から少し離れた所に、訓練所があり、私は兵舎に泊まることなく移動となった。柳と一緒の部屋で寝られなかったので、大変遺憾である。まあ、自分の責任ではあるのだが。
謹慎期間中過ごす訓練所の宿泊所は、一部屋当たり8人部屋で、鉄製の二段ベッドが8つ並んでいるだけだ。食事は食堂、風呂はシャワールームを使う感じで、他に医務室がある。
今回の合宿では、最初の1日は謹慎期間中の私とフィラースが先行して泊まり込みで操縦訓練、戦闘訓練を行う。その後、柳と煌の二人が合流する。
だから、今日の予定はフィラースと仲良くなることだ。フィラースと仲良くなれば、戦闘は安定するし、彼が生き残ることにもつながる。
フィラースは、伝説的凄腕パイロット、フエのクローンだ。故に、彼が母親だと思っている研究員からフエと同等の戦闘力を期待され、物として扱われて育った。
彼が辛うじて優しさを持っているのは、彼を最初に育てた研究員の女性が彼を優しく育てたことだ。しかし、その研究員の女性は解雇され、名前も知らないからその後会うことは無い。
フィラースはずっと訓練を重ね続けたものの、フエ程の力量が無いとして廃棄処分される寸前をディヤーが助けたのだ。また、アクシス・ソブリンではクローンの作成は違法だから、研究所はもう無い。そして、パイロットとしてエーテルノイドと戦うことしか知らないフィラースは第3部隊のパイロットとなるのだ。
故に、無能な人間に厳しく、自暴自棄な性格となっている。
しかし、アニメCELESTIAL NEXUSでは煌が爆しようとするフィラースを何が何でも助けようとしたり、過去を打ち明けたり、エーテルノイドに殺される人々を目の当たりにしたりして、結果フィラースは自分の力を人の為に使おうと考えるようになるのだ。
その後の展開として、フィラースと連携して戦いを進めていけばいいのに、アニメでは改心した矢先に植物状態となる。また、最終決戦でフィラースが居ないから、柳が無茶して前線に出て死ぬことになるのだ。
つまり、フィラースとは迅速に仲良くならないと柳が死ぬし、もしかしたら蓮の死亡フラグ回避につながるかもしれない。そこで、私はこの合宿でフィラースの過去を聞き出し、仲良くなる予定だ。
仲良くなる作戦は以下の通りである。まず、フィアースと共に戦闘訓練を行い、戦うことで仲を深め、夕飯の時とか辺りで過去を打ち明けてもらうのだ。
早速、到着するなり共有スペースに向かい部屋からフィラースが来るのを待つ。謹慎期間中の一日の予定は決まっているから、そろそろフィラースが来るはずなのだが、一向に姿が見えない。
そういえば、彼が謹慎期間中にどう過ごしていたか、アニメでは描かれていないから知らないな。まともに訓練しているとは限らないのだ。そもそも、過去を鑑みれば、訓練を進んでやる訳がないではないか。
このまま彼を待っていたら私も訓練をサボることになるが、これも未来のために仕方ないと割り切るか。決して、訓練をしたくないわけではないと、あらかじめ言っておく。
暇なのでスマートフォンを取り出し、適当にニュースを見ようと思っていたら、勇一から連絡が無数に来ていた。怪我はないかとか、無茶するなとか、レーザー撃つタイミングが早すぎるとか、色々送られている。
ラーディンからも、謹慎大丈夫かとか元気かとか来ていた。前世から連絡を確認しない癖があったから、未読が100件に上っている。折角だから返信しておくことにした。
「全部、問題ない、でいっか」
「おい蓮、何が問題ない、だ。謹慎になって、問題ない訳ないだろ」
聞き覚えのある低くてしゃがれた声が聞こえた。顔を上げると、そこには勇一の姿があった。
「なんで勇一がここに?」
「別件でな。まあ、時間が有るから、お前らを訓練し直してやれと言われてきた」
「勇一、教え方が下手だから、他の人がいいかな」
「下手とはなんだ。というか、俺だって暇じゃないんだぞ」
「何で?」
「それはな、って、話すか。機密事項だぞ。じゃあ、フィラース呼んでくるぜ」
ここに来ている理由が機密事項ってことを話すのもいいのだろうか。まあ、詳しくは聞かないからいいとしよう。
少しして、勇一が奥からフィラースを引っ張って来た。フィラースはかなり不服そうな顔をしている。
「それで?今日はどうすんだよ」
「お前らと戦闘訓練だ!俺に勝てたら、謹慎を解くぜ」
「なんだ、その程度なら簡単だな。一発で沈めてやる」
「フィラース、お互いに頑張ろうね」
「なんだよ、素人、その諦めの顔は?こいつ、そんなに強いのか?」
「そこのフィラースさんよ、余裕あるのも今の内だぜ」
勇一に連れられ、VR訓練室で2対1の模擬戦を始める。設定した場所は海上、時間は昼、機体は勿論、全員自機だ。
今まで、私が勇一に模擬戦で勝てた回数は0。同じ機体を使っていながら、彼に勝つことは出来なかった。その位、勇一は強い。単騎で挑んでいては、勝つ見込みは0だ。
「俺一人で十分だけどな。素人さんよ、足を引っ張るなよ」
「善処するよ」
「お前ら、準備は良いか?」
「勿論」
「うん」
「じゃあ、始めるぜ」
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