第15話 Beat laments the world - E
今回レーザー武器は使えないから、第3部隊の三人の戦力は期待できない。元から頼る予定は無いから、どうでもいいことだが。
自分の足元の雲もせりあがってきたので、今度は横に飛びつつレーザー砲を当てて、その場で爆発させる。爆発の衝撃波とレーザー砲の反動で、右肩部分が損傷したとモニターに出てるが、想定の内だ。
「ゾノビーラとは面倒だぜ」
「レーザーは使えないわね」
「ま、まずは支援を要請しないと」
3人は素早くゾノビーラから離れていくのが見えた。
「こちらスカウター。ゾノビーラの発生を確認」
「こちら司令部、攻撃の許可が下りるまで、退避行動をとれ」
「スカウター、了解」
司令部には退避行動をとると言いつつ、ゾノビーラと一定の距離を保つ。
この後、ゾノビーラは後3体出現するので、それを全て倒しきる必要があるからだ。
「素人さんよ!ゾノビーラは攻撃するとさっきみたいに爆破するんだぞ!ここは俺が抑えておくから、お前は逃げろ!」
「レーザー武器だと爆発するのですが、どうするつもりですか?」
「俺ごと爆発させるに決まってるだろ」
「他にゾノビーラが来たら対処しようがないですよ。それに、爆発させるなら遠距離から撃った方がいいので、フィアースの出番は無いです。ここは私が何とかしますよ」
この戦闘に備えて、実は既にゾノビーラとの模擬戦闘は何度も行っている。コアの位置も爆風範囲も行動パターンも全て暗記している。負ける要素はあんまり無い。
「ちょっと蓮!何勝手に攻撃しようとしているの!」
「ちょっと、皆さんが退避しやすいように」
「こちらアイスブリザード。ゾノビーラ発生につき、支援を要請します」
「こちら司令部、了解。第2部隊を向かわせる、それまで各自退避行動をとれ」
「アイスブリザード、了解」
「デイブレイカー、了解」
「……ファイアストーム、了解」
「スカウター、了解」
そう言いつつ、航空機関砲を構え、照準をゾノビーラに合わせる。
この機体から見える映像とパイロット間の通信を、司令部も把握しているだろうが、何も言わないと言うことは、勝手にしていいと言うことか。司令部は、私の実力を知っているのだろう。なら、都合がいい。
「ちょっと、お前!了解してないだろ!」
「ちょっと、蓮!司令部の命令を聞きなさい!」
ゾノビーラはあまり高速で飛行ができない。その為、核が狙いやすい。しかし、硬い表皮で覆われている為、航空機関砲の通常弾や空対空ミサイルの攻撃は通りにくく、使うならレーザー武器、或いはこのAPFSDS-HFという徹甲弾を使うことになる。
航空機関砲で通常使う徹甲弾より、より高い貫通力を持つ一方、有効射程が1kmと短いというデメリットがある。
ゾノビーラ3体の位置を把握したうえで、更にクリプトンバグが7体来たのを見た。この徹甲弾ならクリプトンバグも倒せるが装弾数は10発、つまり全て核を撃ち抜く必要がある。
口の中が渇いて、手汗でハンドルが湿る。冷静に振舞って見せるが、本当は逃げ出したいし、死に向かうことはしたくない。
しかし、ここはもうやるしかない。私がやらなければ、救援は間に合わないし、全滅の危機に瀕するし、街は破壊され、多くの人が死ぬ。
誰かが死ぬなんて、もう見たくない。私がやらないといけないんだ。覚悟を決めるときだ。
深呼吸を一つしたすぐ後に、一番近くにいたゾノビーラの核に向けて一発撃つ。弾丸はゾノビーラの頭を貫き、無事核に命中し、ゾノビーラは落ちていく。
まずは一体。よし、次だ。この調子ならいける。
先に、徹甲弾でしか倒せないゾノビーラを優先する。残るは2体。雲の下から沸き上ってくるのを見つけるなり、クリプトンバグの攻撃を回避しつつ、2体連続で撃つ。どちらも核に命中し、海に落ちていった。
残るはクリプトンバグか。
クリプトンバグに機体を向けると、レーザーブレードが飛んできて、クリプトンバグを次々に真っ二つに斬っていった。
予想と違い、ゾノビーラ戦はあっけなく終わった。今までの練習の成果だが、少々呆然としているとフィアースから通信が入る。
「爆発しない奴なら、俺でも倒せる。これで終わりか?」
「今のところは」
「なら、作戦は終了だろ。帰るぞ」
フィアースはぶっきらぼうにそういうなり、母艦に向かっていった。
第2部隊がこちらに向かっているはずだから、一応、敵が残っていないか共に確認した方がいいだろう。司令部には殲滅したことを報告しておく
「こちらスカウター、敵エーテルノイドを殲滅しました」
「こちら司令部、了解。スカウターとファイアストームは直ちに帰還しなさい。アイスブリザードとデイブレイカーは第2部隊と合流した後、エーテルノイドが他に居ないことを確認してください」
「スカウター、了解」
「ファイアストーム、了解」
「アイスブリザード、了解」
「デイブレイカー、了解」
司令部から帰還命令が下ったので、直ちにアストロフィア号に帰ると、フィアースと共に直ぐに呼び出された。
戦闘指揮所に向かうと、眉間にしわを寄せたディヤーの姿があった。これは、完全に怒られる流れだ。
「蓮、フィアース、この度の作戦はご苦労。しかし、ここでお前たちと話すのは謹慎に関することだ。お前たちの行動には重大な問題がある」
「ディヤー司令、誠に申し訳ございません。緊急事態とはいえ、命令に違反し独断で戦闘を行い、仲間を危険に晒しました」
「そうだな、蓮。確かに、結果的に二人は無事だった。しかし、少しでもお前が倒せなかったらゾノビーラの攻撃で全員死んでいたかもしれない。戦場では常に死が付きまとう。命令は戦場に送り出すと同時に、お前たちの命を守るための物でもある。それを忘れないように」
「はい」
ディヤーは10代の子供たちを戦場に送り込むことにかなり反対し、結果的に昇進レースから落とされ、テクストライクス結成に至る。だから、彼の第一原理はただ一つ、何が何でも部下を生き残らせること。
しかし、今回は何も言わなかったのは私が対処できると知っていたうえで、叱る為かもしれない。いや、よく見ると第2部隊が既に柳と煌と合流していることから、あの時点で第2部隊がいつでも援護に入れたから、何も言わなかったのかもしれない。
「それとフィアース、お前もだぞ」
「……はい」
「クリプトンバグの群れに単騎で戦わないことだ。場合によってはお前の勝手な行動のせいで、他に被害が出るんだぞ。自分の都合に周りを巻き込むんじゃない」
「申し訳ございませんでした」
「二人とも、1週間の謹慎を命じる。この期間中、二人は訓練所で自分たちの行動を反省しろ」
「了解しました」
「……了解しました」
フィアースと二人で、訓練所で1週間の謹慎。アニメではフィアース一人が謹慎だったが、二人に増えたが、どちらにせよ第3部隊は訓練所に1週間泊まり込みで過ごすので、あまりアニメと大差はない。
アニメでは、この合宿編で4人は少し仲良くなるので、このイベントは今後の為に生かす必要がある。ここから一週間、死亡フラグ回避のために、仲良くなれるよう頑張るぞ。
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