第12話 Beat laments the world - A

 数日後、無事に入隊式を終え、荷物を兵舎に搬入した。部屋で柳と会うことは出来なかったが、非常に残念だ。しかし、直ぐに彼女と会えることは知っていたから、あまり落ち込んでは無い。CELESTIAL NEXUSでは、入隊初日から第3部隊は任務に就くからだ。


 案の定、直ぐに司令から呼び出しがあった。出動命令だ。


 指令室に向かうと、テクストライクス司令のディヤーの姿があった。短く刈り揃えた白髪の男で、今年で56になると言うのに衰えている様子が全くない覇気のすごい人だ。


「入隊初日で済まないが、諸君に新しい任務がある。諸君の任務は第2部隊の援護をすることだ。諸君には早く実戦で活躍してもらえるように、この任務を任せる。詳細は指令書を確認しろ。以上」


 指令書を確認すると、場所はメガラム近郊の上空で、出現しているエーテルノイドはクリプトンバグ。クリプトンバグは、トンボのような見た目のエーテルノイドで、マッハ1で高速移動をすることと、装甲を破壊するほどの顎力があるという厄介な特徴がある。


 今回の任務は、第2部隊が倒し損ねたクリプトンバグを街に到達する前に討伐すること。役割としては、私が偵察し、フィラースが戦闘に入り拘束している間に機動力が一番高い煌が後ろに回って攻撃をし、柳は後ろから援護だ。ここから第3部隊の飛行戦艦アストロフィア号に乗って、現場に向かい、その後出動する。


 指示に従い、アストロフィア号に乗り込んだ。アストロフィア号は、飛行戦艦の一つで、宇宙を航行するだけでなく、空中も航行するので、流体計算に基づいた流線形の銀色の機体をしている。いくら水からエネルギーを取れるとはいえ、エネルギー効率は良いに越したことは無いと言うことだ。


 内装はいかにもSFの船という感じで、青と白色を基調とした部屋が多い。戦闘指揮所の他に、パイロット室、ハンガー、宿泊室、医療室、食堂がある。乗り込んで細い廊下を進み、船首の方にある戦闘指揮所に向かう。


 アストロフィア号の戦闘指揮所は全面モニターで、船の全方位が確認できる大きな部屋だった。無数のレーダーやソナー、通信装置などが見え、そこで6人ほどが機械を確認している。


 出入り口から一番手前に船長の椅子があり、そこのディヤーの姿があった。


 今回、船長は他の作戦がある為、臨時でディヤーが務める。表向きそうなっているが、実際は新人パイロットたちの実力を確認したいだけなのだろう。この作戦は、第3部隊が動かなくても事態は鎮圧できるようになっているからだ。


「指令書にあるように、ターゲットは第2部隊で倒しきれなかったクリプトンバグだ。詳細な作戦マップは既に諸君のGHMに送信してある。作戦開始は30分後。それまでに、クリプトンバグの特徴や作戦場所に目を通しておけ。諸君の作戦の成功を祈る」


 作戦を確認した後、各自準備を始める。準備の流れとしては、ハンガーで機体の確認から武装の決定、着替え、搭乗となっている。


 まず、ハンガーに向かうと、整備班の一人から声を掛けられた。


「どの武装を搭載するんだ?」

「そうですね……」


 AIによる自動化と、3Dプリンター技術の発展、元素合成技術の効率化、核融合の小型化諸々により、この世界ではGHMの値段は数千万程度であり、パーツの値段も数十万程度に抑えられている。また、REZシリーズは武装の付け替えにあまり時間がかからない特徴があるため、こうして作戦前の少し前に武装をどうするか決めることができるのだ。


 そういえば、CELESTIAL NEXUSでは煌は武装を聞かれて、どうすればいいかわからなくて、最初は失敗したんだったか。整備班も彼にどんな装備が良いか教えればいいと思うのに。


「両腕はREZ02と同じ航空機関砲、空対空ミサイルの搭載をお願いします」

「了解。本当にこれで良いのか?」

「はい、それでお願いします」

「そうか……」


 整備班の人は明らかに怪訝そうな顔をしているし、離れた所で何かひそひそと話しているのが見えた。偵察機に空対空ミサイルはステルス性能が失われるので、偵察に支障が出るから載せないのが普通だから、私が何も知らない馬鹿だとでも思っているのだろうか。


 しかし、今回の作戦において、アニメの第1話通りに事が進むならば、少し危険な事態が発生するので、それに備えて空対空ミサイルを搭載することにしたのだ。

 武装の指示を終えた後、隣のハンガーを覗いてみると丁度、彼の機体REZ03-X01、通称デイブレイカーに搭載する武装について悩んでいた。


「えーっと、これは、どうすれば……」

「あの、デイブレイカーは機動性を生かした近接戦闘が強みなので、クリプトンバグと近接戦闘をする前提で、20mm口径のM2A2イノンヴェイトの他に最新のあのブレード、確かエアロワークス-60を付けてはどうですか?」

「生憎、フューチャーテックは班長が嫌っててな。代わりにネオヴォルトはどうだ?」

「……えっと、あの、僕、よくわからなくて」

「まあ、そうだよな。じゃあ、そこのお嬢さんが言う通り、レーザー機関砲とレーザーブレードの二つを装備してみるか。戦闘データによると、君は近接が得意なんだろ」

「ええ、まあ、はい」

「じゃあ、それで準備しとくよ」


 勇一の元で、武装について勉強していてよかった。勇一が口うるさく、最新の装備を確認しておけというから、カタログには目を通しておくようにしているのだ。


「あの、ありがとう。君、名前は?」

「私は蓮。よろしく、煌」

「蓮……。まさか、あの時の蓮!?2年前にニューロシティで」

「そうだな。またこうして出会えるなんて思っていなかった」

「僕もだよ。こんな偶然、あるんだね」

「昔話はまた後で。今は準備をしないと」

「そうだね」


 パイロットスーツに着替え、換装中はハンガーの待機部屋に向かった。

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