Episode3:Beat laments the world

第11話 Beat laments the world - A

 アクシス・ソブリン軍第8航空団、テクストライクス。


 国内に出現するエーテルノイド討伐の為だけに設立された戦闘航空団で、基地を保有し、独断行動が許可されている。飛行戦艦を3機所有しているので、出動要請があれば3部隊がすぐに現場に駆け付け、対処することが可能だ。


 今回、私が所属することになったのはアクシス・ソブリン軍第8航空団GHM群GHM第3部隊のパイロットである。CELESTIAL NEXUSでは第3部隊と言われていて、パイロットは私含め3人いて、全員新人だ。


 第3部隊のパイロットの一人は、煌。


 言うまでもないが、主人公だ。パイロットとしての技能は高いが、優柔不断な性格で、自己犠牲的で、私はあまり好きではない。しかし、第3部隊の他のパイロットに比べれば、扱いやすい性格だ。


 二人目の第3部隊のパイロットは、フィラースという青年だ。


 恐らく、勇一に引けを取らないレベルのパイロットである。しかし、勇一以上に性格に問題がある。毒親に育てられたせいで、彼は親が嫌がるように、死ぬためにパイロットになったのだ。その為、無茶な単騎突撃をしたり、燃料を補充しないで戦闘したり、自暴自棄な戦いを敢えてしている迷惑な奴である。作中では、最後、煌のお陰で改心するも、機体が大破し、爆破に巻き込まれて、植物状態になるという悲しい奴だ。


 三人目のパイロットは、ゆうだ。

 

 絶世の美女で、年齢は16歳、深紅のさらさらとした髪を高い位置で結んでいて、ルビーのように美しい瞳、そして威圧感のある切れ長の目をしているが、可愛らしくふっくらとした唇で、兎に角、美しい少女である。パイロットとして彼女も非常に優秀で、特に狙撃の腕が作中トップクラス。しかし、性格に難ありである。


 端的に言うと、ツンデレなのだ。過去の経験から、自分の気持ちを表現することがかなり苦手になってとなっている。優しくて、思いやりのある人故に、作中では自己犠牲的な煌や自暴自棄なフィラースと対立し続け、最後まで和解しない。


 柳の最期は、煌に思いを告げるが、煌は蓮が好きということを言って、ショックを受けるも、涙ながらにそのまま戦闘で煌を庇って死ぬ。その時、「やっぱり、煌の事が好きなんだ」と言っていて、そのシーンは涙なしには見れない。何で、煌はこんな素晴らしいヒロインではなく、蓮を選んだのだろうか。


 彼女のファンは私を含め、多く居たので、彼女の最期には批判がかなり集まった。私もファンとして許せない気持ちがある。だから、CELESTIAL NEXUSの世界に来たからには、彼女が幸せになれるようにしたい。いや、絶対に彼女を幸せにして見せる。


 テクストライクスに入隊する数日前、基地の兵舎に引っ越すために勇一と荷造りをしていた時、彼が珍しく私を呼び出して話があると言い出した。


「蓮、今日でお前は俺の弟子じゃなくなる」

「うん」


 深刻な面持ちだから何事かと思えば、そのことか。


「だから、俺はこうしてお前の面倒を見てやれなくなる。同じテクストライクスとはいえ、俺は第1部隊、お前は第3部隊だから、あまり会えないし、お前は兵舎で暮らすことになる。だから、俺はお前が心配だ」

「心配するところが何かある?」

「ただでさえその薬を打ってないと生きられないのに、戦闘に出ないといけないし、見知らぬ人と一緒に暮らさないといけないんだぞ」

「テクストライクスに入ると決めたときから、それくらいわかってる」

「それもそうか」


 勇一が指摘した点については既に弟子になると決めたときから覚悟の上だ。それに、兵舎で同室なのは柳なので、見知らぬ人ではない。却って、推しと同室であるから、勇一には申し訳ないが、早く兵舎で暮らしたいくらいだ。


「ただ、一つだけ気になる点がある。お前は例のグリムムーンのパイロットだし、REZ02の操縦技術は俺にも引けを取らないレベルまである。だが、一般の認識だと、お前は1年だけパイロット訓練をした新米パイロットだし、テクストライクスに入った理由は俺の口利きだと思うだろう」

「それが何か問題か?」

「多分、今のままだと他の第3部隊と整備班の連中に馬鹿にされるぞ。偵察機に高出力レーザーを乗せて、装甲を薄くするオーダーを出したこと、既に悪い噂になってるぞ」


 私が乗る機体はREZ03-B02、通称スカウターで、索敵に特化した機体だ。通常REZ03の操作方式は、両腕が自分の両腕とリンクしていて、足元のペダルで速度を調整する。しかし、スカウターは人型にもかかわらず両腕が航空機関砲であり、飛行形態と二足歩行形態の二種類がある為、操縦は7号機に近いハンドルとレバー式。


 勇一とよく練習していたREZ02も、人間の反応速度を超えた操縦をするためにハンドルとレバー式なので、使い慣れている操縦方式で良かったと思っている。しかし、スカウターの欠点として火力が無い点があった。


 だから、REZ02と同等の戦闘力を発揮するには、装甲を薄くして機動力を上げ、高出力レーザーで足りない火力を補う必要がある。しかし、レーザーは一発撃てば反動で機体がダメージを受けるので、あまり連発できない為、対策として他の武器と組み合わせていく必要があるが。


 偵察機だから戦闘力はあまりいらないという意見もあるが、私は元々、REZ02か戦闘機のREZ03のタイプAを所望していたのだ。しかし、この薬漬けの体質と、この世界での戦闘経験の無さのせいで偵察機に回された。不本意だ。


 これでも、前世では姉が7号機の設計に携わっていたから、15の時からテストパイロットをしている。だから、大型機械のパイロット歴は7年目だ。7号機とREZ02は操縦系統が似ているから、操縦技術に関して第3部隊の操縦歴が最長のフィラースにでさえ負ける気は無い。


 ここで、愚痴をついても、この現実が変わるわけではないが。


「まあ、出撃して理解させるよ。大事なのは結果だろ?」

「それもそうか」

「安心して、勇一は戦ってくれ。私のせいで、戦闘のパフォーマンスが落ちると、もっと私について変な噂が立つだろ?」

「そうだな」


 こうして、勇一を納得させた。それにしても、いくら勇一が戦闘馬鹿とはいえ、そんな彼の口利きで入ったと言うことは、逆に期待されているかと思ったのだが。そうでもないと言うことは、最初のイベント、第3部隊の初戦闘でテクストライクスに実力を示してやろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る