第10話 When you sleep - D

 朝6時に起床、7時までに身支度を整えて、家を掃除する。そしたら8時まで、ランニングや筋トレを行い、12時まで操縦訓練を行った。昼食をとった後は、再び操縦訓練や体術の訓練を行い、18時に夕食をとった後筋トレ。そして、ようやく20時に自由時間となるが、22時には就寝だ。


 大学受験をしていた頃を思い出すが、あの時と違い、体をかなり動かすので、毎日、へとへとだ。いくら前世で軍に所属していたから、似たような生活をしていたとはいえ、今のこの体は3か月の入院期間を経て、かなり弱い。故に、疲れやすい。


 勇一にもう少し、楽にしてほしいと言ってみたが、何でも来年には軍学校に私を入れたいし、半年でラーディンに基礎を教えたいそうだ。故に、延々と訓練と体力づくりを行う毎日のようだ。


 操縦訓練は、VRヘッドセッドを使って、VR空間で行うものと、ゲームセンターにありそうなコックピットの模型に乗って行うものの二つをやった。VR空間の訓練の方が、よりリアルに様々な状況を試せるが、実際の自分の体で操縦する感覚も必要とのことで、両方行うことになっている。


 また、半年しかいないラーディンと違い、私の場合は来年、軍学校のGHMパイロット育成コースに入学する為に、GHMの仕組みや戦術についても勉強をすることになっているので、自由時間は全てそれに費やす毎日。


 そして半年が過ぎ、ラーディンはインドゼニスに引っ越していった。


 この半年の影響で、彼が今後どう成長していくのか、CELESTIAL NEXUSの物語がどう変わるか気になる。ラーディンは健気な努力家で、登場早々に死ぬモブに近いキャラだが、アニメでは割と気に入っていたキャラだった。だから、彼がこの経験でアニメのように下手な操縦が原因で死ぬようなことにならないと良いなと思う。


 この半年で影響を受けたのは勇一もだ。面倒見がいいラーディンの影響か、少し甲斐性になった。相変わらず戦闘狂で、毎日のように私に模擬戦を挑むが、五月蠅いくらいに体調は大丈夫か、訓練は大変じゃないか、忘れ物は無いかと聞いてくる。


 最初は前世の両親を思い出して、こういうのも悪くないと思っていたが、一か月が過ぎるころには面倒に思えてきた。今では適当にあしらっている。


 私はというと、この半年以降もしっかり訓練をし、無事翌年の春に軍学校のGHMパイロット育成コースに入学したのだった。


 最初はラノベでよくある学園編が始まると期待していたが、実際は違った。まず、この学校は1年で卒業だ。しかも、学校と言えども、どちらかというと1年かけてGHMパイロットを選定する。その為、テストと訓練の毎日で、他の生徒と交流する機会がない。


 それに、私は家が学校から近いので、自宅から通うことになった。その為、寮生活で仲を深めることはできなかった。


 そして、友達作りで一番の難所は、厳しい訓練に嫌気がさしたり、テストでふるいにかけられたりして学生が減ることだ。入学時は1000人だったのに、入学から一か月で500人程度になっていた。どんなに仲良くなっても、テストで友達が落ちれば、もう会うことは無い。


 故に、学校生活では、特段、特殊イベントは何も無かった。


 今日も学校からへとへとになって帰る。勇一に鍛えられた半年と同じような生活に、テストが加わる日々。だから、肉体的にも疲れるし、テスト落ちたらパイロットになれないというリスクにさらされて、心身ともに疲弊する。

 

 玄関を開けて、リビングに行くと、いつものように勇二は筋トレをしていた。しかし、私に気が付いたのかダンベルを置いて、汗を拭ってリビングと繋がっているキッチンに向かう。


「蓮、学校はどうだ?」

「まあ、ぼちぼち。本物に触れることが一番かな。ただ、家のだと、勇二さんに合わせてREZシリーズの操縦系統だけど、学校だとEAGシリーズを使っているから、そこがちょっと慣れない」

「まあ、蓮ならどっちも使いこなせて当たり前だな!」

「確かにそうだけど」

「友達はできたか?」

「できたけど、皆、居なくなった。腕周りの動きが連動するREZシリーズと違って、EAGシリーズだと操縦技術が大きく影響するみたいで」

「その点、蓮は家で訓練しているから、問題無いな!」

「お陰様で」


 軍学校の試験は、家での勇一との模擬戦闘のお陰で難なくクリアできる。これを考えると、VRセットを入手できない貧困層の子供がパイロットになるのはすごい難しいことだとわかるが、それでもパイロットになった勇一は途轍もない才能の持ち主なのだなと改めて実感した。


 結局、私は何事もなく、友達を作ることも無く、味気ない毎日の末、軍学校を卒業した。しかし、これは嵐の前の静けさなのかもしれない。だって、2年後の冬、私は死ぬから。


 学校を卒業したと言うことは、漸くアニメ開始時点に来れたわけだ。


 アニメの蓮は、この頃、酒場の知り合いの伝手でオペレーターとして軍に入る。 それに対して、私は薬なしでは生きていけないが、パイロットとして軍に入隊した。そして、勇一の紹介で対エーテルノイド部隊、テクストライクスに入ることが決まった。


 これでようやく、アニメのストーリーが始まるのだ。意地でも、12話まで生き延びて見せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る