Episode2:When you sleep
第7話 When you sleep - A
気が付いたら、病室のベッドだった。というのがよくある展開なのだが、実際はそうはならないようだ。
病院に運び込まれたときに、一度意識を取り戻したような気がした矢先、手術室で麻酔で意識をまた失い、そして痛みと熱で苦しんだ末に、意識がはっきりしだしたら、また手術室で麻酔で意識を失う。
手術の繰り返しが終わり、熱が引いて、何かと考えられるようになって、ようやく、病室のベッドに居ると気が付いた。テレビを見るに、知らぬ間に半月経過したようだ。
医者から言われたのだが、寄生型エーテルノイドのせいで臓器の一部が潰瘍を起こしていて、臓器を一時的に人工臓器に入れ替えたらしい。体内のエーテルノイドは粗方取り除いたが、全部ではない可能性が高く、抗エーテルノイド薬を10時間に一回打たないと、残存するエーテルノイドのせいで、また内臓が潰瘍するそうだ。
今度、人工臓器を細胞から培養して作った内臓と入れ替えるそうなので、また手術がある。痛いのは嫌なので、大変億劫だ。右腕も肩から義手になっているし、最悪尽くしである。
一つの物語から外れた行動のせいで、死亡フラグ回避どころか死ぬところだった。
まあ、SF的世界観のお陰で、普通の人間として生活できそうなことと、死ななかったことは幸いか。これからは、CELESTIAL NEXUSのプロットに大きく影響を与える行動は控えた方がよさそうだ。
絶対安静と言われ、暇なのでテレビを付けた。病室は個室なので、遠慮なく大きめの音量でテレビを見る。今は丁度、昼のニュースがやっていた。
「こんにちは、皆さん。12時になりました。ニュースをお伝えいたします」
ニュースアナウンサーの厳格な表情と共に、ニュースのタイトルが映し出される。“ニューロシティ大規模侵攻“と書いてあるから、この前のエーテルノイドの大規模侵攻のニュースだ。
あの後どうなったか情報を知りたかったから丁度いい。
「半月前、私たちの町を恐怖に陥れたエーテルノイドの襲撃から半月が経ちました。しかし、幸運なことに、未確認の機体による深刻な被害は避けられました」
カメラは切り替えられ、誰かがスマートフォンで撮影したバイタルバグの襲撃を受ける街の景色が映し出された。手振れが激しいその映像の中に、黒い影が映っている。あれは、私の7号機だ。
「未確認の機体は軍によって回収され、検証が進められています」
今度は、7号機を軍の技術者や、民間軍事会社の技術者らがコックピットを開けたり、パーツをばらばらにして調べたりしている映像が流れた。
「この機体は一時的に『グリムムーン』と呼ばれており、その正体についての調査が続いています。また、この機体はこれを操縦していたパイロット以外動かせないものと見られ、現在、そのパイロットの特定と連絡を取るための捜査が行われています」
確かに、指紋認証、網膜認証、声帯認証、静脈認証があの機体に搭載されていたはずだ。しかし、私が乗った時にそれらは無かったから、誰でも乗れると思っていたが、そうでは無いようだ。
それにしても、機体はアクシス・ソブリン軍が入手してしまったか。
アクシス・ソブリン共和国は、政府は腐敗しているし、汚職が絶えなくて、軍部の連中は好き勝手使われているという設定がある。だから、CELESTIAL NEXUSでは途中で軍部がクーデターを起こすのだが、軍内部で分裂して内紛が発生するのだ。それに巻き込まれて、テクストライクスのメンバーは死ぬ。
ニュースの様子だと、誰も7号機を動かせないようだし、物語には影響が少なさそうだ。しかし、ここで私がパイロットだと名乗りを上げた場合、7号機を入手したのが反政府の一派だったら、下手したらクーデターが早まる恐れがある。
それに、政府に忠実な方の一派が入手していた場合、テクストライクスと接触できない可能性も出てきてしまう。
私がパイロットだと知っているのは、シンギュラリティ・ブラッドの奴らと、ラーディンだけだ。
シンギュラリティ・ブラッドの奴らが話したとしても、彼らは私の見た目しか知らないし、半グレ集団が12歳の子供が操縦したと言ったところで、信じられることはほぼ無いだろう。
しかし、ラーディンはどうだ。彼はあまり不良じゃないし、16歳の彼が馬鹿なことを言っていると軍部は判断するだろうか。彼が軍部を疑う理由はないから、直ぐに7号機のパイロットは私だと伝えるはずだ。
よくよく考えると、今のところ、病院で手術に入院をしているのに医療費の話を聞かない。それに、病室が個室であることから、もう軍部には伝わっていると考えた方がよさそうだ。
もし、軍部の人間が私に会いに来るとしたら、意識がはっきりしてきた今日だろう。厄介なことになったものだ。
案の定、夕方頃に面会人がやってきた。
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