第5話 Free Your Soul - E
街の一角にできた赤いエーテルノイドの林に入ると、案の定、7号機が横に倒れた状態であった。だけど、私の知っている7号機とは大きく見た目が違う。
まず、二足歩行になっているし、フォルムがスリムになっている。カラーリングの黒ベースに赤と白のラインが入っているのは相変わらずだが、表面に赤い線で繊細な模様が血管のように無数に走っている。電源ケーブルはエーテルノイドの森に繋がっているし、ほぼ見知らぬ機体だ。
コックピットの位置は前と大体同じだったから、乗り込むことについては問題なかった。内装も相変わらずで、椅子に座るタイプで、メインカメラの映像の流れるモニター、操縦用のレバーの移動用と、カメラ移動用、あと銃火器用のボタン。
しかし、これでどうやって二足歩行の機体を操ればいいんだ。モニターは小さいし、そもそも4足歩行用だから、重機の操縦席みたいな状態なのだが。まあいい、乗ればわかるはず。
椅子に座り、エンジンボタンを押す。通常なら、キーが無ければつかないのだが、何故かエンジンがかかった。システムが起動して、モニターに某日本企業の名前が出てくる。そして、メインカメラの映像が流れると思ったのだが、どうも企業の名前が文字化けして、切り替わらない。
異世界に来て、見た目もおかしくなっているし、故障かと思ったが、画面は動いている。文字がぐにゃぐにゃと変わり、形が作られている。そして、意味のある文字列となった。
“”Initializing Database...
Connection Established...
Hello, Ren. With love... “”
この機械は蓮を知っているのか。それに、愛をこめてって、どういう意味だ?一体、7号機はどうなってしまったんだ。
モニターに手を触れた途端、モニターが青く輝きだしたと思うと、コックピット内が変形しだす。まず、視界が開けてコックピット全面がモニターになった。背後からは触手のようなものが伸びてきて手足と首に絡みついてくる。操作系統の部分もレバーから、Wの形の操縦桿に、高度、速度、機体破損状態、水平位置など、色々書いてあるモニターが4つ現れた。
レバーやらスイッチやらが無数にあるが、色々と操縦方法が分からない。
取り敢えず、足元のアクセルペダルのような二つのペダルに足を乗せ、横にある”Rise”と書いてあるレバーを引く。すると、機体が立ち上がったようでモニターに街の風景が高い位置から映し出された。人が小さく見える。
次に、ペダルを右のペダルを前に傾けるように押すと歩き出した。この程度であれば、私でも動かせそうだ。操縦桿を操ると、機体の体の向きが変わった。メインカメラの映像は自分の頭の向きと連動しているようで、顔を動かすだけで、景色が変わる。
後ろに下がるのは、右のペダルを後ろに傾ければいいみたいだ。左のペダルはブレーキなようで、右を踏んでいても左を踏めば動きは止まる。
右手にあるサイドスティックを操ると、これはアームを動かすようで、両手に持ったの自動小銃のような見た目の機関砲の照準を動かせるみたいだ。背後に格納されているミサイルもボタン一つで使えそうである。これなら、前の7号機と同様に使えるはず。
モニターを見ると、今の7号機はHumanoid mobility specialized modeらしく、動きは速そうだ。Mode選択がありそうだが、今は検証している暇は無いので、そのまま発進する。
市街地をエーテルノイドの森に向かって進む。
大規模侵攻を止める為に対エーテルノイド部隊の到着まで、できる限り多くのバイタルバグを倒すためだ。あんなに大きかったバイタルバグでも、7号機に乗ってみれば拳大程のサイズだ。それを撃って落としていく。
この町の人の多くはシェルターに無事に逃げられたようで、道には人の気配が無かった。だから、バイタルバグを撃ち落としても、人的被害は無いと判断したからだ。バイタルバグの一番の厄介な点は、鋭い大顎でシェルターの壁を突き破ることである。早急に倒した方が、街を守るために最善なのだ。
街のバイタルバグをあらかた倒し、街を出る。西の方角から、大型飛行船が複数見えたから、そろそろ街にアクシス・ソブリン軍の対エーテルノイド部隊が来るはずだ。これで、街は大丈夫だろう。
森に目を向けると、壁の穴からバイタルバグが何匹も這い出して来るのが見えた。街に飛来しては困るので、壁に向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます