第12話 後悔

 それを拗らせてしまったのは俺の落ち度だ。

 高校に入る頃には、オレと箏羽には共通のものが無くなってしまっていた。


 そして羽ばたくきっかけを与えてしまったのが……同好会で一緒の男子生徒だった。


 キャンプという機会を得て、彼と行動するようになったのは必然だと言えよう。同じ趣味共通の話題──互いの距離が近くなるのは当然である。


 本来なら、隣で一緒に行動しているのは俺のはずだった。

 箏羽が俺の掌から飛び立ってしまったと実感した。気づいた時には、もう俺の腕の中には残像しか残っていない。


 俺は自暴自棄になっていたのかもしれない。

 もしかしたら、箏羽が意識してくれて戻ってきてくれるかもしれない。

 そう思って、手当たり次第言い寄ってきた女と付き合った。


 しかし、箏羽は戻ってきてはくれなかった。


 もう俺は諦めるしかないのか……。

 嬉しそうに同好会に参加する箏羽の笑顔は──もう俺には向いていない。


 今までなら言い合いしても怒っても、オレと向き合ってくれていた。俺を見てくれていた。

 しかし今は……。


 もう俺の存在は箏羽には無いのだと錯覚してしまう。

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