懺悔 side周

第11話 互いの距離

 俺が箏羽のことが好きなのは、いつからだろうか?


 家が隣同士、互いの両親は意気投合。小さい時から一緒に育ったようなものだった。意識するまでは手を繋いでよく歩いていたものだ。

 筝羽と一緒にいるという生活は、俺の中では当たり前で、心地よいものだったと自覚する。

 自分だけに向けてくれる表情が、とても嬉しかった。

 そう、俺の中で箏羽の存在はかけがえのないものだった。


 いつからだろうか、その〝カタチ〟が狂い始めたのは。


 俺は歳を重ねれば重ねるほど、歪が大きくなっていくほど、その原点を探るようになっていた。大きくなってから探るのは遅いとも思う。

 気が付けば箏羽と俺の方向性自体が違っていた。


 最初はそれでもいいと思っていた。

 繋がっている部分があると信じていたからだ。俺と筝羽の共有している時間は、他の誰よりも長く親密だと信じて疑わなかった。

 それが絶対的な絆だと思っていた。


 いつからだろうか、箏羽が俺の手から〝羽ばたく練習〟を始めたのは。


 外が好きで動くことが好きな箏羽はいろいろなことに挑戦する子だった。興味を持てばすぐ行動に起こす、そんな元気な子だった。


 俺は、箏羽と一緒ならそれでよかったんだ。

 でも箏羽の〝羽〟は大きく羽ばたき、俺の手からすり抜けていくかのように飛び立つ準備をしているように思えて焦ったのを思い出す。


 だから『気を引きたくて』敢えて真逆のことをした。

 俺の方を向くように接していたんだ。

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