09話 第七階層 剣神の王城3

 なんだコレ?


 アリウスが消滅した場所には手のひらサイズの小さな白い玉が転がっていた。


 よくよく見ると、うっすらと発光している。


『これは、英霊玉と呼ばれる英霊の魔石です。一応鑑定しておきましょう』


 俺は、ナビゲーターさんの言う通り鑑定を掛けた。


 [英雄アリウスの魔石]

 英雄アリウスの魂輝が内包された魔石。魂魄薄光症を改善することができる伝説級の遺宝である。


 魔石か……一体どんな味がするんだろう?


 俺は早速魔石をいただく。魂魄……なんだっけ?伝説?今はそんなことはどうでも良い。


 モグモグ……やはりホワイトチョコレートか。匂いでもしかしたらとは思っていたんだ。


 うま〜い!

 

 まさか、異世界でホワイトチョコレートを味わえるだなんて……魔石だけど。


〈スキル、【英霊召喚】を取得しました〉


俺は魔石を食べ終わり新たなスキルを取得した。


「英霊召喚?もしかして、アリウスを呼べたりできる的な」


 俺は、ナビゲーターさんに聞く。


『その通りです。アリウス様はこのダンジョンにて英霊へと転化したためフロアボスとしてダンジョンの制約により囚われていました。しかし、主人様により枷が外れ英霊が本来向かうべき場所、聖獣界に戻っているでしょう。アリウス様の魂輝を取り込んだ主人様なら呼び出すことが可能です」


 よし、早速呼び出そうかなっとその前に俺の直感が言っている……統合しろと。


 ちなみに、今の俺には【直感】というスキルは取得していない。


 あくまでスキル統合をするタイミングと統合するスキルの選別のみに【直感】が働く。

 

 ナビゲーターさんが言うにはギフトの能力の一部だと言うことだ。


 それでは早速、スキル統合をしよう。


 俺は直感でスキルを選別していく。


 【陽炎】+【土塊操作】+【土人創造】+【凝縮】+【英霊召喚】=【英雄召喚】


 俺は、【英雄召喚】を鑑定する。

 

 [英雄召喚]

 英霊召喚時、自らの魂輝を練り込んだ土人形を作成し英霊を憑依させることで英霊の持つ生体情報から自らの肉体を創造し一時的に英雄本来の姿へ戻ることが可能。練り込んだ魂輝の量によって顕現する時間が伸びる。

 〔現在召喚可能な英霊〕

 ○アリウス・グラトキエール・ダ・ライベリア


 つまりは、英霊としてのデメリットが消えた感じかな?


『時間制限を抜きに考えればどうやらそのようですね』


 ついでに俺も鑑定しとこう。


名前: 【セナ】

種族: 【虹石幻獣イーリスカーバンクル

称号: 【転生者】 【進化を果たす者】

魔力階梯:【第八階梯】

闘力色:【白】

深淵スキル:

ユニークスキル: 【ナビゲーター】【鑑定眼】【石喰い】

スキル: 【剣術】【魔導術】 【遊泳】【視線誘導】【気配感知】【砂かけ】【風化】【超硬化】【魔力感知】【思考加速】

統合スキル: 【大獣の威厳】【氷天極鎧】【火炎放射】【幻想世界】【疾風迅雷】【千変万化】【英雄召喚】

ギフト:【スキル統合】

魔法適正:【光】


 ふむ、まぁまぁスッキリしたかな?


 早速、【英雄召喚】を試そうかな。


 俺は【英雄召喚】を発動すると地面に白銀色に輝く幾何学模様の魔法陣が現れた。


 魔法陣の中心には土人形が作成され、段々とその土人形が変化していき最後には先ほど戦ったアリウスの姿に変化した。


 それにしても、魂輝が減った感覚がしなかったな。

 と言うか、未だ覚醒に至っていない俺は魂輝を感じることができない。

 どのくらい、減ったんだ?


『おそらく、数分間だけ顕現することができる程度の消費量です。数分あれば回復するでしょう。覚醒に至れば、主人様の魂輝は膨大のため数万年単位の顕現が可能ですよ』


 数万って、俺の魂輝どんだけあんだよ。


 俺が自身の魂輝量に戦慄しているとアリウスが話しかけてきた。


「先程の挑戦者か。すまんが少し戸惑っている。現状を説明してほしい」


 俺はアリウスに英雄召喚のこと等を一から説明した。


「なるほどな。見知らぬ場所にリポップされていたからまさか、あそこが聖獣界であったとは」


 どうやら、聖獣界には行けたようだ。

 

「聖獣界は、どんな場所だった?」


 めちゃくちゃ気になる。召喚獣が住む異世界に。


「言葉では言い表せないような美しい場所であった。そして何より、心が安らぐ」


 行ってみたいなー。

 いつか聖獣界には訪問させていただこう。


「ところで挑戦者……いやマスターと呼ぶべきか、我は今よりマスターの召喚獣だ。そして何よりも、我を倒し且つこの肉体を作り出してもらったからな、如何なる命令でも従おう」


「いや、結構です」


「なぜだ?」


「俺はあまり堅っ苦しいのは嫌いなんだよね?主従関係とか?元王様には悪いけど俺はあんたを良き隣人、又は友達として接したい」


 ん?ナビゲーターさん?主人様をおちょくる従僕はいません。いたら即クビです。解雇です。あれは、単にナビゲーターとしての使用で本人はロールプレイを楽しみたいからって理由で主人様呼びしてるだけらしいです。


『ちんちくりん』


 いつか、変なスキルを取得したらナビゲーターさんに統合しようと思っている。これ確定事項だから。



「ふむ、マスターがそう言うのであればそうしよう」


「セナだ。今度から、セナと呼んでくれ」


「わかった、セナ殿」


 殿か、まぁいっか。


 アリウスの現状について大方説明し終わった時彼の体が崩れ始める。


「どうやら、時間切れのようだな。何か困った事があれば力を貸そう」


 彼はそう言うと、体が崩れ落ち淡い光となって小さな白銀色の魔法陣の中へと消えていった。


 さて、師匠のところに戻りますか。




 ◇



 ・師匠の異空間


「いやーまさか、敵が召喚獣になっちゃうんだなんてねー興味深いな」


 俺は、師匠に第七階層を攻略したこととアリウスについて説明した。


「制限時間付きだけどね」


「でも、かなり強力なスキルだよ。次の階層攻略が楽になるね?」


「いや、ダンジョン攻略に関しては一人でするつもりだよ。流石に一人じゃ厳しくなったら頼らせてもらうけど行けるところまでは一人で行きたいんだ」


「そういえばそうだったね。まぁ、今は怪我を治さなきゃだからしばらくは療養だね?」


 あの目は、モフる気満々の目だ。


 その後、俺は一週間程モフられながら療養し再び攻略を開始するのであった。

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