08話 第七階層 剣神の王城2
この十年間、ただ魔力と闘力だけに力を入れてきたわけではない。寧ろ、もっとも力を入れてきたのは体づくりだ。
何故?と思うかもしれないがそれは俺のスキルに関係している。【大獣の威厳】、【疾風迅雷】は多くのスキルを統合し出来上がったスキルのためかなり強力だ。
以前、【大獣の威厳】を発動しつつ体を動かしたが急激な身体能力の向上に体が追いつかず転んだり骨折したりとかなり師匠に迷惑をかけた。加えて、発動後の筋肉疲労が大きすぎるため一週間寝込む羽目になる。
故に、スキルを使いこなせるようにするために自らの体を鍛え上げ、その後約五年で二つのスキルを使いこなすことに成功する。
残りの五年は戦略の幅を増やすことに力を入れた。
例えるなら、魔法攻撃の多様化。これに関しては、前世の知識を活かしてかなり強化されたと思う。
残りは、能力の同時使用の修行をした。
今の俺なら、魔法、闘力、スキルを全て同時に発動することができる。
特に、相性の良い組み合わせを発見していくことはかなり面白かったし良い暇つぶしにもなった。
そして今日、この十年間の集大成を披露することができる。
「さて、始めるか。いつでもくると良い」
アリウスは鞘から剣を抜き放ち正面へ剣を構える。
俺も、長剣を抜き放ち闘力を最大限まで練り上げた。
「先手もらうよ」
俺はアリウスに接近し剣撃を放つ。
「良い太刀筋だ!」
それを難なく受け止められてしまったが忘れてはならない。
俺は剣士であり魔法使いでもあることに。
「《
俺は人差し指から光線を放ちアリウスの額を掠める。
「今のは危なかったな。まさか魔法まで使えるとは」
感嘆の息を漏らす。
「血を流すと言うことは実体はあるんですね」
英霊って言うから物理とか効かないんじゃないのかなと思っていたけど杞憂だったかな?
「英霊は実体を持つが死霊系モンスターに有効な聖属性魔法が効きにくいんだ。皮肉なことにな?」
なるほどね。聖属性のゾンビ的な感じかな?
最早、生前より強いんじゃないの?
『いいえ、彼の肉体を構成しているのは魂そのものです。故に、肉体を傷つけられると言うことは、魂そのものに傷をつけられるということです。深淵スキルの弱体化及び発動時に自身の肉体を削らなければならないため生前より大幅に弱体化しております。ですが、英霊の持つ深淵スキルは強大で弱体化したとしても通常の覚醒者とは比較にならないほど強力です。素面であれば永遠に全盛期の体を保つことができます』
どっちにしろ、強いことには変わりないんだよな。
俺が英霊のチートさを実感しているとアリウスからとてつもないエネルギーの本流を感じた。
「何だ?!」
アリウスの体から白銀色のオーラが吹き出している。
「すまんな、魔法使いとやり合うにはこの体では少し荷が重くてな。深淵スキルを使わせてもらう」
なるほど、勝負を決めにきたか。
魔法でダメージを受け続ければ深淵スキルが弱体化するからな。当然か。
「深淵スキル、【剣神の覇鎧】!」
その瞬間、世界が白銀光に染まった。
光が収まると、そこには漆黒の鎧から白銀色の鎧に様変わりしたアリウスの姿が存在した。
黒から白に変わってる?さっきの暗黒騎士も良かったけど聖騎士ってのもかっこ良いな。
それに、あの身体中を覆っている荒々しい白銀のオーラからとてつもない威圧感を感じる。
これが深淵スキルか。
ナビゲーターさん、【剣神の覇鎧】ってどんなスキル?
『深淵スキル、【剣神の覇鎧】は魔法攻撃の無効化及び自身の身体能力の底上げ、そして自身が斬りたいものを何でも斬ることができる能力です」
斬りたいものを斬る?
『やろうと思えばアドミニストレータ様を斬ることができます』
うん!チートだな。
自身の認識によってなんでも斬れちゃうわけね。
『斬撃が当たればの話ですがね。ヒットアンドアウェーを心がけましょう』
ボクシング的な?
魔法攻撃無効に防御不可の攻撃、まさしくラスボスって感じだな。ついでに彼のステータスを確認するか。
名前: 【アリウス・グラトキエール】(・ダ・ライベリア)
種族: 【ハイヒューマン】
称号: 【初代ライベリア国王 】【賢王】【剣神】 【豪傑者】 【覚醒者】【英霊に昇華せし者】
魔力階梯:【第六階梯】
闘力色:【白】
深淵スキル:【剣神の覇鎧】
ユニークスキル:【絶対両断】【飛翔斬撃】
スキル: 【剣術】【魔力感知】【覇王の風格】【制御解除】【達人武闘】
ギフト:【予測】
魔法適正:【水】
やっぱりすごいな。
俺たちが彼のステータスと【剣神の覇鎧】の能力に戦慄しているとアリウスは何もない場所で剣を横に薙いだ。
『伏せてください!』
俺はナビゲーターさんの言う通りに伏せる。
スパーンッ!!
その瞬間、城が真っ二つに両断された。
「ほわあああ!?」
思わず変な声が出てしまった。てか、今のなに?
『【飛翔斬撃】と言われる斬撃を飛ばすユニークスキルですね。当たれば即死です。』
ありがとうナビゲーターさん。
ちなみに師匠に関しては既に深淵スキル発動時に異界の扉内へ避難しているため巻き込まれてはいない。
「今のを避けたか。中々感が良いな。それとも何かしらのスキルか?」
ん?予測のギフトかな?
「さぁね?」
俺は惚ける。
「さて、最早出し惜しみは無しだな」
俺は【大獣の威厳】、【疾風迅雷】、【思考加速】を発動した。
その瞬間、世界が緩やかに動き始め俺の体を風が包み且つ雷が体から迸る。
その間に他のスキルも発動していく。
「ほう、まだ上があったか。ん?」
彼は違和感に気づく。
「いつ、斬られた?」
その瞬間、彼の右腕が地面にぼとりと落ちた。
「単純に接近して斬ったんだよ」
俺は、雷のような速さで彼の右腕を切断した。この時にスキル【超硬化】を発動し無ければ体がバラバラになってしまうかなり危険な移動方法だ。
しかし、アドミニストレータが作ったこの体は鍛えれば鍛えるほどより丈夫になっていき今では【超硬化】無しでも移動することができる。だが、念のため発動はしている。
「流石だ。深淵スキルと見違うほどに強力なスキルだ。しかし、次はそう簡単には当たらんぞ」
その後、言葉通り俺の攻撃をいなされ当たりづらくなった。しかし、ヒットアンドアウェーを繰り返しながら少しづつ彼にダメージを与えることで目に見えるほどに深淵スキルが弱体化していることがわかる。
「尻尾が邪魔そうだな?」
その通り。マジで尻尾が邪魔すぎる。それに2本もあるから余計に気が散る。てか、尻尾を庇うたび斬撃が掠る。
この際千切るか?いやダメだな。とあるモフラーが悲しんでしまう。
そこで、俺はスキル【幻想世界】で相手を撹乱させ距離を開ける。
「無駄だ。居場所は既に把握している。」
しかし、彼は瞬時に俺を見つけ出し向かってきている。
だが、俺はこの一瞬の間合いが欲しかった。
「確か、魔法攻撃は無効化されるんだよな?じゃあスキルでの攻撃は有効なんじゃない?」
俺は、一点集中型の【火炎放射】を放った。
最早、それは熱光線で彼の胸に穴が開く。
「ゴフッ!」
その瞬間、彼から発する白銀のオーラが消えた。
その代わりに淡い光の玉が彼を包み込み体が消滅していく。
「まだ、隠し球があったとはな。どうやら、口だけではなかったらしい」
彼はそういうと、
「……お主であれば大切な者を守り通し悲しませることはないだろう。」
「……だが忘れてはならぬ。」
「……慢心から絶望がやってくることを。」
「……常に精進することだ。」
そう言葉を残し彼は消滅した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます