06話 夜明けの錬金術師2

 「さて、次は闘力について教えよう」


 お願いしまーす。


「まず、闘力というのは体内にある生命エネルギーを素早く循環させることで自身に身体強化を施す技術だ!循環するスピードが早ければ早いほどより強力な身体強化を自身に施すことが可能になる」


 おぉ。すごーい


「なんか、魔法の時と態度違くなーい?僕としてはこっちが本命なんだけど」


 まぁ、闘力も確かにファンタジー感はある。

 だがしかし魔法の次となるとなんかショボく感じるんだよねー。


「ふふふ。わかっていないなセナ君は!」


 何?確かに闘力については何も知らない。だけど身体強化ができる技術なんだろ?想像はつくさ。


「いんや、だとしたらセナ君の想像力は乏しいとしか言えないね?」


 なんか煽られてる。


「いいかい?想像してみてほしい。もし君の大切な人が悪者から危険に晒されているとするよ」


 ほうほう。


「そこでだ、その悪者は魔法攻撃が一切効かない体質またはスキルを持っていた時、君は体一つで戦わなければ行けなくなる。そんな時、闘力を扱うことができればかなり心強いんじゃないかな?加えて身体強化系のスキルを重ね掛けしたらかなり戦いが楽になるんじゃない?それに、異世界を満喫したいのならとことん満喫するべきだよ。もしかして君の世界には闘力って存在したのかな?」


 いや存在しない。

 そうだな。俺の目的は異世界を満喫すること。魔法だけでは無く闘力も思う存分やってやろうじゃないか。

 それに、傷つきながらも誰かを守るのはかっこいい。

 前世でもそうだった。だけど彼女を最後悲しませてしまったのは人生最大の後悔だ!

 次は生きて大切な人を守れるぐらいには強くならなきゃ。慢心はもうしない。


 俺は獣人の姿になり服を着替えた後師匠の話を聞く。


「よし!やっと乗り気になったね?続きを説明するよ?実は闘力にも魔力と同じ色があるんだ!」


 「ステータスに乗っている闘力色のことかな?」


「その通り!生命エネルギーは循環の速さで色が変わる。淡ければ淡いほど循環が早く、ステータス欄に記載されている闘力色とはその人の循環スピードの最大値を表すものなんだ。」


「黒、紫、青、緑、橙、白、金色の明確な力量差ってどんな感じなの?」


「わかりやすく言うと黒は一般人並みで紫が成人男性二人分の戦力、青は紫の10倍、緑も青の10倍と金色になれば成人男性20万人分の戦力になるね。まぁ、あくまで目安だから闘力色が金色で巨人の場合はもっと戦力が上がるんじゃないかな?」


 種族的な問題か?まぁ、流石にそんな出鱈目な奴には遭わないだろ!

 …………もしかしてフラグ立っちゃった?考えんとこ。


「さて、次は生命エネルギーの動かし方を伝授しようか。両手出して?」


 魔力感知と同じか?


 俺は両手を差し出し師匠が俺の両手を握る。


「ちょっと痛いかも」


 え?

 俺は覚悟ができないまま自身の体内にある生命エネルギーが動き出した事を感じた。それと一緒に強い痛みも後から追いかけてくる。


 ウゥ!


 ちょま!痛すぎる。まるで血管の内側を焼かれているような感覚がする。

 ……

 …………

 ………………


 あれから2分ほどが過ぎ、痛みに慣れていくと自分で循環できるようになった。


「最初はかなり痛むけどその痛みを乗り越え続けていけば次第に循環が早くなり色も変わるよ!」


 魔力も闘力も増やして淡くするためにはかなりの努力を積まなければいけないらしい。

 

 よし、決めだぞ!俺は師匠とここで修行をさせてもらう。


「ふふふ。我慢できるかな?じゅるり……」


 やっぱりさっさと攻略するかー


「な、なにもしないよー!だからもうちょっと修行して行きなよ?ね?アドバイスならいっぱいしてあげるから〜!我流だけど剣術教えてあげるからー!」


 はぁ、俺の心は男子高校生だけど体はまだ生まれたばかり。精神が体に引っ張られているのか性欲に関して全然興味が湧かないんだよね。かろうじて高校生として綺麗な女性には興味があるのだけどあくまで「美人な人だなー」って思うぐらいなんだ。

 

 今の赤ちゃんからしたら師匠は少し怖い。変態的な意味で。


 しかし、異世界を満喫するためにこの世界で生き残るために誰よりも強くならなければならない。圧倒的な理不尽を圧倒的な力でねじ伏せられるだけの力を手にするには修行しか道はない。


「冗談ですよ。これからよろしくね変態師匠」


「ウゥ。変態って言い過ぎだよ。ウゥ」


 泣いてる師匠はほっといて早速修行だー!

 

 


 ◇


 


 あれから十年が経過した。

 え?本当に十年が経過したのかって?

 かなり本気で十年が経過してる。冗談抜きで。

 何故こんな年月が経っているのかと言うと次の階層からは割とマジでヤバい奴しかいないんだと。師匠の話によると次の階層からは第一から第六階層とは違ってフロアボスしかいない階層でそのフロアボスはいずれもあの時の俺では攻略が不可能だったらしい。ナビゲーターさんも次の階層に行こうとするのであれば止めていたらしい。


 そして今日、とうとう師匠とナビゲーターさんからお墨付きをもらった。


「ステータスで言えば既に僕を超えているし大丈夫だと思うけどやっぱり深淵スキルがないと少し不安かな?僕は第六階層までしか潜ったことがないから実際どんなに強いのかはわからない。だけど、知り合いが言うにはフロアボスは全員覚醒者とのことらしい。そして、第七階層からはフロアボスを倒さなきゃ転移陣が起動しないらしいよ。まぁ攻略ができなくても僕の持っているリターンでいつでも地上に戻れるんだけどね?スペアがあるから今からでも一緒にダンジョンから出れるよ」


 師匠は少し不安げな表情をする


「まぁ、異世界を満喫するのが俺の目的だからね!中途半端は嫌なんだ。最後までダンジョンを満喫させてもらうよ」


「セナ君は、ブレないねー。だけど、ここは現役最強の冒険者が匙を投げ出したって言うダンジョンだから本当に困ったらちゃんと頼ってね?私も着いていくから」


 最強の冒険者がか……ていうか


 「え?師匠も行くの?先に地上に帰っても良いのに?」


「十年も一緒にいたのに冷たくない?」


 俺としては二十年一緒にいた気分なんだけどね。


 寝る時は俺の尻尾をもふり風呂には毎日一緒に入った。


 あれ?これって最早夫婦じゃね?


 なんだかんだ言って師匠は第二のお母さん的な存在。

 決して恋愛感情は抱いていないはず?


 でも、一緒に着いてきてくれると言われて少し嬉しかった自分がいる。


「冗談だよ。困ったらお互い助け合おうね?」


 あれ?やっぱりこれって夫婦……気のせいか?


 ちなみに俺は既に150センチほど身長が伸び、獣姿では既に成体の猫ぐらいには成長した。見た目は猫だけど。

 そして、ナビゲーターさんが言うには俺は寿命がないらしい。だけど不死ではないから致命傷なんか食らったら普通に死ぬ。それに、体の成長速度が遅いためか身長の伸びが悪い。180センチにならなかったら本気であの老人を恨む。


 そして今のステータスはこんな感じだ。


名前: 【セナ】

種族: 【虹石幻獣イーリスカーバンクル

称号: 【転生者】 【進化を果たす者】

魔力階梯:【第八階梯】

闘力色:【白】

深淵スキル:

ユニークスキル: 【ナビゲーター】【鑑定眼】【石喰い】

スキル: 【剣術】 【魔導術】【遊泳】【陽炎】【視線誘導】【気配感知】【砂かけ】【風化】【土塊操作】【土人創造】【凝縮】【超硬化】【魔力感知】【思考加速】

統合スキル: 【大獣の威厳】【氷天極鎧】【火炎放射】【幻想世界】【疾風迅雷】【千変万化】

ギフト:【スキル統合】

魔法適正:【光】


 スキルに関しては剣術と魔導術そして思考加速を習得し俺の腰には師匠からもらった長剣がぶら下がっている。また、魔力階梯と闘力色はかなり上がり洗練された。

 深淵スキルについては、どうしても発現できず今後に期待するしかない状況だ。


「それじゃあ、次の階層に行きますか!」


 シェイプシフターから奪った黒の革鎧を身につけ、

 

 俺は十年ぶりにダンジョン攻略を再開するのであった。

 

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