第二十五章 エピローグ <入社7年目夏>

第133話 SJWの足跡

 ラスベガスのホテルの一室で、烏山がPCで記事を書いていた。


 題名は『日本女子プロレスの革命児、女子プロレス団体SJWの足跡』だ。


 ①ランキング制度に続きAIシステム導入


 ②全日本チャンピオンシップトーナメントの開催を主導

 ・初代ヘヴィ級チャンピオンはSJW所属アラタ選手

 ・初代ジュニア級チャンピオンはSJW所属ミナミ選手


 ③翌年、4チームによるプロレスリーグを設立を主導

 ・4社合同設立によるコミッショナー合弁会社をSJW主導で設立

  (M&Aアドバイザーも導入し、掟破りの早期設立を実現)

 ・年間60興行

 ・初代リーグ優勝はSJWのライバル団体DIVAが奪取


 ④その翌年となる昨年、二代目リーグ優勝を勝ち取ったのはSJW


 ……書きながらここ数年を振り返る。


(大沢さんとミナミちゃんのコンビはバケモンだな。AIシステムを筆頭に、まさかプロリーグまで作っちゃうなんて。業界が完全に進化したんだから、すごいことだよ)


 すると、その記事を横から覗き見した後輩記者が興奮気味に語り掛ける。


「いやー、ほんとにすごかったっすよね。昨日のミナミとツツジ」

「……そうだな」

「さすがツツジは赤いベルト保持者。でも、ミナミのフィニッシュは圧巻でしたね。ツツジに勝って白いベルトを巻いた実力者の貫禄。いやーすごかったです。知ってますか?この二人、もともとはSJWで同期だったらしいですよ」


 烏山は苦笑いするしかない。


(誰よりも先に、ミナミを見出して特集記事を書いたのはおれだぜ。知ってるに決まっているだろ)


 当時を思い出し、ふっと笑う。

 サクラやアキラにしごかれて、ぐえっとかうがっとか言っていたあのミナミが、今ではSJWのツートップの一人になって、世界に飛び出したのだ。


「あ、そろそろ式の時間ですよ。早く行きましょう」

「おお。これを日本に送ったらすぐ出るぞ」


 烏丸は最後に数行追記すると、送信ボタンを押した。


『⑤そして今年9月。全米タッグ王者とAIシステムを使った真剣勝負。

 SJWのツツジ・ミナミ組が、日本団体初のラスベガス球体型複合アリーナ『スフィア』興行にて、全米トップタッグを撃破』





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