第127話 中盤戦

 リングに戻る二人。

 ツツジの表情が変わった。


(見たことがない動き?)


 ツツジはミナミの片膝を取ると、その膝に絡みつくようにグリンと回す。

 ドラゴンスクリューだ。

 ミナミは慌てて受け身を取る。


(……やばい、ぼっとしていたら靭帯切れてたかも……)


「私も以前の私じゃないんだよ」


 ツツジは、今度はその膝に足をかけて、膝十字固め。


「いててて……」


 先ほどのドラゴンスクリューのダメージに加えての関節技は本当にきつい。

 慌ててロープへ手を伸ばす。


「まだよ」


 今度は、ミナミをリング中央へ引きずり戻し、腕と首を足で挟んで三角締め。


「関節技……渋いじゃない」

「これも私のスタイルの一つよ」


 SJWではあまり関節技は見せてこなかったツツジ。


「なんでこれまで見せてこなかったのよ」

「SJWには関節得意のアキラさんがいたからね。被っちゃうでしょ」


 それを聞いて、ミナミはハッとした。


「それって、まさか……」

「そう。私がDIVAに移った理由。SJWに残るより耀ける選択肢をくれたの」

「誰が?」

「もう、気付いているんでしょ?」

 更に締め上げるツツジ。


「あいたたた……」

 なんとか這いつくばり、ロープに足を延ばしてエスケープする。


(そっか。大沢さんは、やっぱり選手全員を本当に大事に見てくれているのね。ツツジのことも、引退後のアラタさんのこともきっとそうだ)


 ミナミは微笑みながら立ち上がる。


「あら、効いてないのかしら?」

 ツツジがミナミの腕を取る。


(一本背負い?)

 その腕を振り払い、ツツジの胸にエルボーを打ち込む。

 二発、三発。

 そして、回転力を付けたローリングエルボーでツツジをなぎ倒す。


(地味だけど、スピードと肘の硬さによるインパクト重視よ)

 そして、ワンステップでコーナートップロープへ。

 ギロチンドロップを打とうとするが……


(あれ?まさか、先ほどのダメージが残っている?)

 膝に違和感を感じるミナミ。


(このままでは打てない、ツツジにけがはさせられない……)

 以前、サクラが渋谷を斜めに投げた時を思い起こす。


 立ち上がったツツジがコーナー上のミナミに襲い掛かる。


「秘密兵器を見せてあげるわ」


 ツツジはセカンドロープに登ると、ミナミの腕を取りリング中央に向かって巻き込むように投げる。


(やばい、受け身とらなきゃ……)

 しかし、落差が大きくツツジの体重も加わり背中を大きく打ちつける。


 ミナミの意識が途切れた。

 それほどまでに大きな威力の雪崩式一本背負いだった。

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