第115話 トーナメント第一戦

 ミナミの第一試合の相手は、DIVAの中堅レスラー。

 SJWの興行に単身乗り込んできていた。


 ミナミは控室に挨拶をしに行く。


「よろしくね。今日はマスクは着けないんですって?」

「はい」

「そう。じゃあ、フェアな試合ができそうね」


 なんだか上から目線だけど、にこやかに受け流す。


(こんなところで無駄な労力は使わない。これぞ、プロレス外交力学よ)


 そして、試合が始まる。


「青コーナー、SJW所属、サザンあらため、ミナミ入場です」


 リングアナの紹介で、入場曲が流れる。アラタから引き継いだ曲だ。

 そして、花道を歩き出す。

 素顔のままで。


 SJWの興行ということもあり、そして素顔のミナミとしての初戦でもあり、それがジュニアトーナメントの1回戦でもあり。

 満員の観客から大歓声を受ける。


(みんな、ありがとうございます!)


 青と白を基調にしたシンプルなワンピースタイプのコスチューム。

 バランスの取れたプロポーションだが、本人はウエスト周りを気にしている。 

 リングインすると、四方向にそれぞれお辞儀をする。


 そして、対戦相手もリングイン。

 DIVAのコスチュームはガルパほどではないが可愛らしい。

 フリフリが付いているビキニタイプ。


 ゴングが鳴る。


 リングを回って、力比べ。

 関節技の掛け合い。

 ロープに飛ばしあい空中技の技比べ。


 この一連の流れで、初対面の相手でも大体の実力が見えてくる。


(なんとか、いけそうだわ)


 ミナミはギアをあげていく。

 投げ技の撃ちあい。

 イズミやアラタとの特訓の成果で、投げ合いになると滅法強い。


 ついに大技ジャーマンスープレックスを決める。

 続けて、タイガースープレックス。

 ワンステップでトップロープに飛び乗り、天井に向かって拳を挙げる。


「いくぞー」


 観客の大歓声に乗り、ローリングギロチンドロップ。


「1……2……3!」


 ミナミは危なげなく初戦を突破した。



 勝利者インタビューの後、週刊WWの烏山記者がミナミへの単独取材を申し込んできた。

 特に今回は、サザンのマスクを脱ぎ、ジュニアトーナメント準決勝に歩を進めている真っ最中だから、絶好の餌食である。


 最初は、やはりマスクを外したことに対する質問が多かった。

 それらをこなしていき、やがてAIシステムに関する質問も終え、最後に技術の質問。


 そして、質問を終えて機材をしまうと、烏山は唐突にミナミにオフレコの質問をした。

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