第112話 決断
「まじめな話してもいいか?」
「はい……なんでしょう?」
「ミナミが覆面で続けたいか、取りたいか」
「はい。実家でも話をしました。もうマスクに頼らなくてもやっていけます。今日にでも、マスクを外そうと思います」
それを聞いて、大沢は大きく頷いた。
「わかった。それで、マスクを外したらミナミはヒールを続けるか?ベビーフェイスに移るか?」
「え?それは……」
ミナミは一瞬の間を置いた。
すでに、結論は出ている。
「……私。やっぱりアラタさんみたいになりたいです」
大沢はまた大きく頷いた。
アラタは旧ZWW最後のベビーフェイストップレスラーだ。
そこを目指すというのなら、答えは一つ。
「わかった。であれば、今日のタッグはいい経験になると思うよ」
「あ……」
今日のタッグパートナーは、SJWの現ベビーフェイストップのアキラだ。
「はい。勉強してきます」
「そうするといい。でも一つだけ約束してほしい」
「え?」
ミナミは不安に感じる。
大沢のひとつだけ、は大概2~3この条件を言い渡されるフラグだからだ。
「マスクを脱ぐのは今日の試合終了後だ。でも、試合内容が悪かったら延期だ」
「はい」
「で、マスク脱ぐまでは、ヒールレスラーに徹すること。今特訓している新技も使うなよ」
「ええ?」
大沢が秘密訓練中の新技を知っていることに驚く。
(……ああ、アラタさんからレポートされているのか。それにしても、新技なしで大丈夫かしら……)
不満そうなミナミの表情を察した大沢は説明を追加する。
「マスクを脱ぐという効果は大きい。でも、それを最大限にしたいなら戦い方も変わったということを示す必要がある。つまり、新たな必殺技が必要だ」
「……ベビーフェイスでの試合まで温存した方が良いと?でも、トーナメントに選出されなかったら……」
今日の試合が終わったら、もう選手選出。そして、来週はトーナメント初戦だ。
「安心しろ」
大沢はミナミの両肩を掴んだ。
「ミナミは絶対にメンバーに選出される。それだけの実力を身に着けている。自信を持て」
いつの間にか、大沢の後ろに、アラタとアキラ、イズミが立っていた。
三人とも、自信を持った表情で頷く。
「わかりました。大沢さんのアドバイス通りにやってみます」
「ああ。最後のヒール、満喫して来い」
ミナミは覚悟を決めて、アキラと共にメインイベントに向かって歩き出した。
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