第96話 初のシングルメイン
「若い娘たちには試合の台本を渡しているの。アイドルの舞台と変わらない感覚ね」
クーガーは申し訳なさそうに苦笑い。
「だから、リアルタイム評価はメインのみでお願いするわね。それを勉強しながら、ガルパは早急に変わらないといけないわ」
元々目指す方向性が違うガルパ。
それでも、ディスラプターを前に積極的に方向転換を掛けようとしている。
ミナミは感心していた。
「クーガーさん、わかりました。私も協力します」
「ありがと。あ、二人の時は久我って呼んでね。これが本当の芸名なの」
そして、ウインクをしてくる。
「それと、リングで一緒に歌わない?」
「えええ!?いえいえ、私、カラオケもほとんど行ったことないですし、そもそも覆面ヒールですから無理です」
「あら、マスクを外したら絶対モテると思うのに。残念ね」
こうして、二人はメイン試合を迎えた。
ミナミにとっては、初のシングルメイン試合である。
(まさか、SJW以外でねぇ……)
ミナミは先にリングイン。名前を呼ばれ、いつものように横柄に右手だけをあげる。ヒールはお辞儀挨拶するなよという指令を、試合開始時だけは守っていた。
「よく来たな、サザン」
「異次元殺法期待しているぞ」
なんだか、SJWとは客層も異なる。
男性比率が異常に多い。
アイドル系女子プロレス団体だから当然ではある。
(でも、ガルパファンから敵視はされていないみたいでよかったわ)
内心ほっとするミナミ。
そして、クーガーがリングイン。
キャピキャピの振り付け。
ファンへの投げキスアピール。
受ける声援の大きさが全然違う。
「クーガー対サザン、30分1本勝負を始めます」
ゴングが鳴る。
リングを時計回りに回りながら軽快なステップのクーガー。
独特なステップはメキシコ発祥のルチャ・リブレ。
アイドルだからこそのリズム感と肉体表現力を活かしたスタイル。
アクロバティックな動きで翻弄される。
素早い動きで意味不明な体勢から丸め込まれる。
ラ・マヒストラルだ。
慌てて全身をばたつかせてカウント2で返す。
(何これ、あぶな……)
その後もアクロバティックな動きが冴えている。
体の柔軟性と難しいダンス表現で鍛えたアイドルだからこその強みなのだろう。
さらに、ところどころでファンに向けての笑顔とかわいいしぐさを織り交ぜる。
それを見ながら、ミナミは会場の一体感がどんどんと増していくのを肌で感じ取っていた。
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