第100話 祭りのあと

「それでは、技術、攻防、テンション、特別ポイントを合計した個人優勝の発表です」


 結果は誰の目に見ても明らかだった。


「DIVAの吉祥選手です」


 花束が渡される。

 その光景を、最も悔しそうに見ていたのは、いつもはお淑やかでクールなアキラだった。


 そして、団体総合優勝もDIVA。

 大歓声の中、インタビューが終わり、ついに宴は解散となった。


「やっぱりDIVAはすごいな」

「あたりまえだろ。選手層が違うし、吉祥がいるからな」

「それにしても、あのAIシステムはすごいな」

「SJWが持ち込んだんだろ?」

「マッチングも話題になってたけど、リアルタイムスコアリングは画期的だな」

「あれが、今後のプロレスの基準になっていくんじゃねえか?」

「今回は歴史に残る瞬間に立ち会えた気がするぜ」


 駅に向かう観客の興奮は簡単に冷めるものではなく、そこかしこで今大会の感想が飛び交っていた。


 こうして2日間でのべ6万人をあつめた4社共同による東京ドーム興行は大成功で幕を閉じた。


 大会終了後に各団体社長が集まり、簡単に今後の確認を行う。

 ミナミも大沢に同行した。


 大会の総括や精算もあるが、やはりAIシステムの取り扱いと次回共同イベントが全員の関心ごとだ。特にAIシステムについてはもはや無視できない大きな流れとして認識されつつある。

 1か月以内に、次回の4社会談を持つことで合意し、やっと本解散となった。


「大沢さん、おつかれさまでした」

「ああ、ミナミも、よくやったな。おかげで大成功だ」

「良かったです。このあと、どうします?みんな打ち上げに行ってますが……」

「そうだな。ミナミは?」


 そう問われて、頭を掻いて苦笑する。


「乗り遅れちゃいましたし、今日は出場選手が主役ですから、私は遠慮します」

「そうか」


 大沢は、スマホを取り出し、画面を確認すると、もう一度ミナミの方に顔を向けた。


「じゃあ、この後食事でも行くか?」

「え?いいんですか?」


 ミナミはパーッと笑顔を咲かせるのだった。

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