第58話 全面対抗戦
1月第二週に入ると、団体としても会社としても通常営業が始まる。
いつも通りであれば、普通にSJWの面々で練習して興行に臨み試合を行っていく。
しかし、今年の1月はいつもとは違った。
TVのバラエティショーに出ていたイズミが、大阪の女子プロレス団体『OWP』に関して爆弾発言をしたのだ。
『女子プロレスはヒールの時代だ。SJWはヒールのトップ。大阪のOWP?パワーだけが取り柄の渋谷?あんなのおれたちに比べたら相手にならねえ』
渋谷といえば、日本で一番と評されている現時点でのトップヒール。
その渋谷にかつてのトップヒールであるイズミが喧嘩を打った形だ。
そこまでなら、バラエティの席での暴発で済んだ。
だが、騒ぎは徐々に大きくなる。
翌週。
渋谷はOWPの興行の中で『自身が一番のヒールだ、SJWは口だけだ、文句があるならかかってこい』とマイクパフォーマンスを見せる。
更にその翌週。
なんとSJWトップヒールのサクラが大阪に単身乗り込んだのだ。
たまたま、渋谷のカードが組まれていない大阪郊外の興行。
中盤の試合に乱入。
大ブーイングの中、試合をぶち壊し、若手レスラー二人をマットに沈めるとマイクを取る。
「渋谷、どこに隠れてやがる?おれは逃げも隠れもしねえ。東京に出てこいや、いつでもケリをつけてやる」
これを受けて、SNSでは大騒ぎに発展。
サクラの行動の是非が真っ二つに分かれて議論された。
そこに火をつけたのがマスメディアだ。
特に、バラエティにも出ているイズミの発言が発端だったこともありテレビ局が執拗に問題を取り上げる。
その間もそれぞれの興行後のインタビューを通じて、渋谷、イズミ&サクラが激しく自己主張を繰り返し、両団体が対立する構図が出来上がっていった。
もはや、直接対決をするしかない。
そのような認識が日本全国に広がっていくまでに、1ヶ月とかからなかった。
こうして、ついに両社代表による正式発表が行われる。
3月下旬。
エディオンアリーナ大阪でのSJWとOWPの全面対決がアナウンスされた。
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