第47話 初インタビュー
「え?インタビュー?」
そんな段取りは聞いていない。
記者は週刊WWの烏山と名乗った。動画配信用のカメラマンが二人を映す。
ミナミとツツジは並んでカメラの前に立った。
「すばらしい試合でした。感想をお聞かせください」
まず勝利者のツツジが質問を受ける。回答も慣れたものだ。
サザンは才能がすごい。新人だが早いうちに最高のライバルになるだろう……そんなことを答えている。
「では、サザン選手。デビュー戦でした。手ごたえは?」
「え?え、私?……えーっと、はい、頑張りました」
「ツツジ選手との関係は?」
「同期生です」
「練習も一緒にしているんですか?」
「はい、ほぼ毎日」
「仲が良いですね。では、今後の抱負と夢をお聞かせください」
(いきなり言われても……正直に思っていることを答えないと失礼よね)
「えっと…プロレスの技と技のぶつかり合いの魅力を伝えたいです。そしていつか、ツツジとタッグを組んで世界に挑戦したいです」
全試合が終わった後の控室。
メインを終えたサクラが唖然としていた。
「……そんなこと言ったの?」
「はい、突然の質問だったので頭が回らなくて……」
(絶対、怒られる……)
インタビュー後、ずっと後悔していた。
でも、もう配信されてしまっている。
(なんで、あんなこと言っちゃったんだろう)
ミナミは俯いた。
「ヒールのくせに、ベビーフェイスと仲良くタッグを組んで世界を狙うって?ミナミとツツジはそういう関係だったのか?」
それを聞いて、控室のみんなが大笑い。
ミナミは顔を真っ赤にして首を横に振った。
「違います、違います」
「リングでは結局お辞儀してたしな」
「すみません……」
さすがにかわいそうに思ったアキラが苦笑いしながら声をかける。
「ヒールらしい受け答えができればいいけど、ミナミちゃんはそんな器用なことはできないって全員知ってますからね」
「ま、そうだな。期待もしちゃいねえしな」
ミナミは顔を上げる。
「怒って……ないんですか?」
サクラが笑う。
「面白かったからいいんじゃないか。SNSでも異次元感覚の覆面ヒール爆誕と反響は悪くないらしいし。大沢さんからもグッジョブだってメッセージが来てるぜ」
「ば、ばくたん!?」
「ああ。とにかく、デビュー戦お疲れ様。よく頑張ったな」
「本当に良い内容だったと思いますよ」
サクラとアキラにそう言われて、大沢のフォローももらって、やっと、自分は頑張れたんだと実感がわいてくるミナミだった。
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