第45話 マスク
デビュー戦まで二週間。
(マスクやコスチュームはどうやって準備しようかしら?)
支給はされない。選手は自分でデザインを決め、業者を決めて用意する。
悩んでいると、大沢に呼び出された。
「マスク決めるぞ」
社長室では業者がマスク写真をテーブルに並べていた。
サクラも同席している。
「サンプルを用意してもらった。デザインを決めてくれ。あとこのまま寸法合わせもして、1週間で準備してもらうように予約をしてある。デビュー戦前にマスクをつけて練習して慣れる必要もあるからな」
「大沢さん……ありがとうございます」
プロテストに受かって数日だ。
やはり、受かると信じて事前予約をしてくれていたのだろう。
ミナミは感謝し頭を下げた。
「てかさ、ださくねぇ?誰がデザインしたの?」
サクラがズケズケと言い放つ。
「おれだけど?」
「ああ、やっぱり大沢さんか。相変わらずだな。これも、これも、これもイマイチだ」
かなり失礼ではあるが、的を得た批評をしながら、手に取ったサンプル写真を次々に横にどけていく。
やがて、そこそこシンプルなマスク写真を掴むと、徐にマジックで模様を描き足す。
それだけで新鮮さと不気味さがうまく調和する。さすが本職トップヒールだ。
「どうだ?」
「はい。ありがとうございます」
こうして、サクラのおかげでなんとかまともなデザインが決まった。
その数日後、ポスターが出来上がった。
メインイベントは、アキラとワカバvsサクラとイズミ。
いずれも初タッグ。
まだ1年目のワカバがメイン試合に出るというのも思い切った抜擢であり、間違いなく最高のメインイベントになるだろう。
必然的にポスターの中央にはこの四人の大きな顔写真が鎮座する。
「うわー、こんなに豪華なポスターは今までなかったわね」
代田がしみじみと呟いた。
(本当に、清楚できれいなアキラと、キャピキャピの可愛いワカバ。めちゃくちゃ映えるわね)
辞めたいと言っていたワカバだったが、続けてくれたおかげで最高の舞台が用意されたことをうれしく思うミナミだった。
「で、こちらが、謎の覆面サザンちゃんね」
右下に、ツツジの写真が載っている。
その横には、真っ黒の丸い楕円に、『謎の刺客、覆面ヒールの新人サザン』と書かれている。
まだマスクもできていないので、ミナミの写真は載っていない。
「これから、活躍しまくって、早く真ん中に来なさいね」
「はい、頑張ります」
ミナミは両手のこぶしを強く握って応援に応えた。
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