第44話 報告

「ツツジ、ツツジ」


 1階に降りると、リング脇で基礎練習をしているツツジに飛びつく。


「ミナミ?」

「デビュー決まった」

「え?マジで?」


 それを聞いて、その場にいた選手たちも近づいてくる。


「いつ?」

「10月の八王子、第一試合」

「おおー、大舞台じゃん。誰と?」

「あのね……」


 ミナミはちょっともじもじする。


「相手はツツジだって」

「あたし?マジで?」

「うん。お願いできる?」


 ツツジは、本当にうれしそうに答えた。


「もちろんだよ。ミナミの処女は私がもらうのね。こんなうれしいことはないわ」

「全くもう。優しくしてね。痛くしないでよ?」

「手加減はできないぜ、覚悟しな」


 すると、周りの選手たちもミナミを取り囲む。


「おめでとう」

「ついにデビューね」

「ツツジちゃんとだったら、いいデビュー戦になりそうね」


 ミナミはみんなに答える。


「はい、ありがとうございます。ありがとうございます」


 そして、また後でねというと、急いで階段を登る。

 実はまだ、本業の正社員として仕事中なのだ。


 事務所に入る途中、アキラとサクラにもチャットを入れる。

 すぐに返信が来た。


『良かったわね。最高の試合ができるように、頑張ってね』

『おう。ツツジが相手か。蹴散らせよ。負けたら朝練でしごき3倍だから覚悟しろ』


 ミナミは嬉しさを隠せなかった。

 こんなにも、みんなに見守ってもらい、ついにデビューができる。

 全力を尽くして、みんなに恥じない試合をできるように、頑張らなきゃ。


 そう心に誓うのだった。



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