第39話 シャワールーム

 ミナミとツツジは思う存分練習をして、くたくたになりながらシャワーを浴びていた。


 日曜日午後の本社。

 試合のない休日だから、誰も来るわけがない。

 必然的にバカな会話もしやすくなる。


「ミナミ、うまくなったと思うよ。特に間の取り方」

「ありがとう。アキラさんやサクラさんにも鍛えられたもの、少しは上達しないとね」

「あと、スープレックスもいいわね。膝と腰のバネが強くて柔軟だからかな」

「モーグルやってた成果かしらね。腰から下半身は自信あるのよね……って、そんなこと言ってもカフェぐらいしか奢れないからね」


 それを聞いて、ツツジが苦笑する。


「ほんと、おもしろい娘よね。ミナミって。プロレスのためにモーグルやってたなんて人、今まで聞いたことないもの」

「ふふふ。モーグルではエア練習もやってたから、トップロープから場外にだって飛べるわよ。なんなら、720度くらい回れるんだからね」


 ミナミはおどけて見せる。


「ははは、さすがにプロテストで場外への飛び技やったら失格になるからやめとけよ」

「やらないわよ。もう」


 シャワーから出ると、ツツジはミナミの肩を抱き寄せた。


「ね、ミナミ。いつか、一緒にタッグを組もうよ」

「いいわね。私、覆面ヒールだけどね」

「覆面だろうがヒールだろうが関係ないよ。ミナミとは一番息が合う。同期だもんね」

「そうね。でも、私たちがタッグを組むなら、大きな目標を立てないとね」


 それを聞いて、ツツジはにやりと笑う。


「そうだな。やはりタッグベルトを取りに行くか」

「日本ベルトじゃ物足りないわ。やるなら、世界一を目指そうよ」

「よっしゃ。でも、その前に、まずはプロテストを取らないとな」

「うっ、現実に戻された……」


 そんな馬鹿話をしていると、急に更衣室のドアがバタンと開く。


「きゃー---!」

「だ、誰?」


 誰かが入ってくるなんて予想もしていなかったので、二人ともびっくりして慌てて身構えた。

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