第21話 2回目の合格発表
4月末。GW前。
DX対応が佳境で3月の定期テストを受けられなかったミナミのために特別に実施された臨時プロテスト。
もし合格したら、集客時期であるGW大会のひとつのネタとして、新人デビューというストーリーも期待されていたのかもしれなかったが……
今回は前回以上に悪い結果で不合格となった。
「理由はわかっているか?」
「……はい、練習不足です」
わかっている。それだけではない。
ワカバのこと、大沢のこと。
気持ちの整理が整ったころにはすでに手遅れのタイミングだった。
「社員とレスラーを両立は大変だと思うが、次に向けて気持ちを入れ替えて頑張るように」
大沢が席を立つ。
ミナミは何も言えず俯いていた。
全て正論だからだ。
大沢はアキラに向かって小さく頷くと、その場を任せ先に部屋を出ていった。
「……ミナミちゃん」
アキラはミナミに声をかけた。
「朝練だって頑張り始めたんだから、このまま頑張れば次のテストまでに調子は戻るわ。私も練習付き合ってあげるから、次こそ頑張りましょうね」
「……え?」
普通なら、トップレスラーのアキラが練習生の練習に付き合うなどありえないことだ。
「ミナミちゃんは、素質も抜群。努力も人一倍。この一年は社員として頑張ってくれたから練習不足になっちゃったってみんな知っているわ。だから、プロレスの方は私たちにも協力させて頂戴ね」
「アキラさん……ありがとうございます」
社交辞令でもうれしい。
そして、悔し涙が止まらない。
アキラは二回、肩をポンポンと叩くと、笑顔で出ていった。
そして、翌朝7時。
いつも通り、朝のひとりトレーニングに向かったミナミ。
だが、異変に気付く。
本来、誰もいないはずの更衣室。
「ミナミ、遅せぇぞ。さっさと柔軟しろ」
「え?サ、サクラさん!?」
そこにいたのは、トップツーレスラーのひとり、サクラだった。
(GW大会前の最終調整の大事な時期なのに!?)
そしてもう一人。
「ミナミちゃん、おはよう。朝練ってすがすがしくて悪くないかもしれませんね」
「……アキラさん……ふたりとも、大事な大会の前なのに……」
ミナミは言葉を失う。
こんな贅沢なシチュエーションがあるだろうか。
「なーに、ミナミとの練習なんて朝飯前のウォーミングアップみたいなもんだ。それよりも、みっちりしごくから、自分の心配しとけよ」
「そうね。覚悟しなさいね」
これが、のちにSJW名物となる朝練の始まりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます