第15話 最終段階
年が明けると、1月から3月にかけて、片倉はほぼSJW本社に入り浸り状態になった。
カスタム開発したDXシステムの本格的なインストール作業に入ったからだ。
対応するミナミも、あっちいったりこっちいったり走り回っていた。
「ミナミ、最近練習できてないけど、大丈夫?」
ツツジが心配そうに様子を見に来てくれる。
「うーん……4月1日の稼働開始日までは、バタバタっぽいの」
「そっか。しかたがないわね。3月のプロテストは、今回はおあづけね」
(そうだ。昨年9月の試験も仕事で受けられず、今回も……でも、今は仕方がない)
「無理せず頑張ってね」
「ツツジ、ありがとう」
ミナミは、声をかけてくれる親友に感謝しつつ、仕事に没頭した。
3月末になると、実際のシステムの横で、模擬的なシミュレーションを走らせ課題を抽出し修正するデバッグ工程に移る。
「すごいっすね、こんなに簡単に……」
「次に何をすればいいかも教えてくれる」
デバッグに協力している北沢の営業部隊は大盛り上がり。
彼らがこんなに生き生きとしているのを見るのは初めてだった。
そして、やはり一番時間がかかったのが、興行スケジュール組み立てシステム。
「興行スケジュールの決定には、それまでの選手のバイタル推移もチェックして……」
「開催地の他イベント有無、会場のダイナミックプライシングも……」
「選手の動線、開催間隔、他にも……」
これまで営業が様々な要素をもとに組み込んでいた職人技を伝授するのに相当の時間がかかった。
逆に言えば、営業メンバーが一人でも抜けたら興行スケジュールまともに立てられなかったってことだ。
これらを、現場で最終調整しながらシステムに組み込んでいく。
こうして、ついに、運命の4月1日を迎えた。
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