第四章 DX改革 <入社1年目夏~冬>
第9話 売上アップのためには……
入社してから半年経った。
ミナミは、小さなコストダウンは実行したが大した成果は上げられていない状況にふがいなさを感じ始め、デスクに突っ伏して頭を抱えた。
(このままじゃまずい。全然貢献できていない)
その悩みを悟ったかのように、大沢社長がオフィスに入ってきてミナミに声をかける。
「ミナミ、コストダウン進まないなら、抜本から考え直してもいいぞ。相談事があったら声かけてくれ」
「あ、ありがとうございます」
(ああ、せっかく大沢社長から声かけてもらえて嬉しいのに……内容は叱咤だなんて……)
凹むミナミに対し、経理部長の代田が近づいてきて、耳元でささやいた。
「社長って、ミナミちゃんに対しては優しいわね」
それを聞いて、ミナミは驚いた。
「ええ?そうなんですか?……てか、皆さんには優しくないんですか?」
「うーん、優しくはないわね。どっちかといえば、クールよね」
「え……と、そうなんですね。そ、それは、多分私がまだ半人前だから……」
代田はクスッと笑いながら自分の席に戻る代田。
(……嫌だ、からかわれたのかしら?)
ミナミはまた、机に突っ伏して、大沢の言葉を思い出す。
コストダウンといっても、手を付けられる場所は全体経費の12%だけ。
初手としてはいいけど、そのままじゃ大きな効果は得られない。
(……抜本的に……か。やはり、売上アップも考えるべきタイミングよね)
であれば、北沢営業部長に聞くのが手っ取り早い。
「どうやったら売り上げをあげられるんですか?」
回答はシンプルだった。
「営業パワーが足りない」
「バイトさんとかパートさんとか雇ったら?」
「プロレス業界って業務内容が特殊でだから即戦力は期待できないな」
興行スケジュール。
対戦組み合わせ設定。
チケット販売。
グッズの企画・調達・販売。
映像配信、ホームページ更新。
興行運営。関東地方開催はイベント企画会社には頼まずに自分たちで企画から行政届出、会場や人員手配・設営まで走り回っている。
それに加えて、日々の伝票処理、手紙、電話、報告書や勤怠などの日常雑務。
これを社員3人と若手レスラーだけで回しているんだからえげつない。
ふいに、ミナミの頭の中に、DX(デジタルトランスフォーメーション)という単語が映し出された。
(であれば、あいつに聞くしかないか……)
人に会ってきますと言い残して本社を後に出ていった。
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