9話 死体処理PART3

こんな雑な捨て方で本当に良いのか、ぼくは気になっていたけれど、昼休みになる頃には「まあ、仕方ない」と投げやりな気持ちになっていた。もう少し良い言い方を考えるなら、ミミを信じる、だろうか。


「なあ」


フジがぼくの前に立つ。ぼくの机に両手をついて、少しだけ眉間にシワを寄せる。こういう顔すらカッコイイのは羨ましい。


「……、本当にあの女と付き合ったのか?」

「うん」


ぼくはわざとらしい「うんざり」を表情に滲ませながら笑った。


「忠告はありがたいし、まあ、たぶん、フジの心配も間違いじゃないとは思うよ。でも」


ぼくは机に置かれたフジの指を軽くつねった。


「好きで付き合ったし、好きだから付き合い続けようと思ってる。フジがなんと言おうと、そこは変わらないよ」


フジはぼくの指をつねり返してから、ため息をつき、咳をするみたいに笑った。


「わーかったよ。でも頼れよ、何かあったら俺を」


もうとんでもないことは起きてるんだよ、フジ。そう言ってみたくなったけれど、ぼくはとりあえず曖昧に頷いた。



「さて、残りをポイしましょう」


誰もいなくなった教室、ミミはぼくの机に手を置かず、豊かな胸を支えるような腕組みをしながら笑った。まだ日は夕日にはなっていなくて、でも、少しだけ赤みを増している。


当たり前のようにぼくの部屋にまたミミがいる。袋の中で液体になっているであろうアイスが床に転がっていて、重力に負けていた。


「食べる?」

「食べる」


ミミは袋をあけ、液体になったバニラチョコを自分の口に流し込んでから、ぼくにキスをした。軟体動物のように動く舌がぼくの口の臆へと甘さを運ぶ。


「ぷはぁ、ははっ」


息継ぎと共にミミは笑った。ぼくもつられて微笑んだ。うまく表情ができていればの話だけれど。

ミミは冷凍庫を開け、肉やら骨やらを取り出した。そしてぼくらは通学前とほとんど同じ手順で捨てに行った。不思議と、もしくは、当たり前なのかもしれないけれど、ぼくは慣れ始めている。


「疲れた?」


捨てきった帰り、電車でぼくの肩に頭を乗せながらミミは聞いた。


「まあ、少しは」

「少し? 本当に」

「これくらいなら、って言い方は正しいのかはわからないけど、これから毎日がこうなったとしても大丈夫、だよ」

「ふふ、プロポーズみたいで嬉しい」


毎日、というのは現実問題無理だろうな、とぼくは思った。両親もずっと出張しているわけではないし、ミミがぼくから離れていくかもしれない。でも、ぼくは何となく、このまま続く限りは続けていこうと思った。


「ねえ、今日は増えたくないの」

「そんなことできるの?」


ミミは服を乱暴に脱ぎ捨て、ベッドへと飛び込んだ。小さくベッドの上で弾む。


「寝たら、増えちゃうから……ね?」


部屋の明かりを消した。何の香りもしない。







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