第51話 どーだっていいこと

 教室では今もあのときのように、生徒たちが教師の命令で床に伏せているのでしょうか。

 燃えさかる炎の中、とっくに死んでいるにもかかわらず、教師の言いつけを守っています。その教師自体も、死んでいるのでしょう。(いいつけを解除する人がいなくなってしまっては、どうしようもない)

 死んだらきっと、みな一人きりの自分に戻れるのでしょう。

 それこそが、真の救済なんでしょうね。

 灰になってでも大人のいいつけを守るのは美しい姿でもあります。

 あたしだって、守りました。

 青い地球に、身も心も染まりきったのです。

 どこかで産声が聞こえます。

 お姉様が産んだ子に、違いありません。

 彼女は、その子に、どういう名前をつけるのでしょう。

 あたしは、「なゆた」という名前はどうだろう、と思いました。

 そして、勝手に赤ん坊にそう名付けました。

 なにせ、あたしはたくさんいるのだし、別にどれがどのあたしでも、どーだっていいんだ、と思ったのです。

 死んでいった、かつての〈宇宙人としてのあたし〉は、〈えらかった〉のでしょうか? 

 ……そればっかりは、未だにわからないのですが。

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