第48話 それもまた、愛の形だよ

 炎は〈文脈山脈〉にまで及び、このままだと多分、宇宙船ごと丸コゲになってしまうでしょう。

 あたしはやはり、この地球に取り残されてしまうのでしょうか?

 ふと月を眺めると、誰かと目が合いました。


 ――人生においては、軌道修正が大切なのだ。地球だって、住めば都というものさ。


 パパの声がします。

 じゃあ。パパ、ついでに、親子をやめましょう。

 あたしがそう言うと、パパは、大層喜びました。


 ――それでこそ宇宙人というものだ。第一、我々は繁殖など目的にしていないし、愛情もない。父親など、個としての確立が進んだ時点で、食いちぎって噛み殺したっていいんだ。


 パパのこと、嫌いでもいいんですか?

 親子というのは地球の感覚ですものね。


 ――それは、ちょっと。


 なんていいかげんな人なのだろう、と思いました。

 面倒なので、「とにかく、他人同士だね」と、話を結んでしまおうとしました。


 ――それもまた、愛の形だよ。


 愛なんて宇宙人には関係ないんじゃないでしたっけ?


 ――郷に入っては郷に従えってね。地球だって、慣れれば大丈夫さ。


 なるほど、あたしは地球に従順な宇宙人ですね、へへ。

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