第37話 これは、かわいいのでしょうか?

 指先からこぼれ落ちそうな精液を見て、反射的にちろりとなめてしまいました。

 にがいことはにがいのですが、思ったより味はしませんでした。(新鮮だったのでしょうか? これは、かわいいのでしょうか?)

 コンドームに口をつけて啜ると、今度は強い苦みと、喉に張り付く不快感が襲いました。

 サルはとがめるでもなく、ぼうっとして、「こんな汁であかんぼうができるって、わけわかんねーな」と言いました。

 たしかに、そう思います。

 あたしの中にこれが入り込んだら、もしかしたら、赤ちゃんが(あたしの分身みたいなのが)できるかもしれない。

 あたしが死んでも残る、あたしのかけらです。とっても不思議で、そんなの「わけわかんねー」と、心底思いました。

 なにより、あたしが宇宙人でないのなら、こういう液体をもとにあたしが生れたことになります。

 地球人とは、なんと不気味なのでしょう。

 強いて言えば、あたしはねばねばしておらず、青臭くもないのでそこばっかりはよかったと手を叩いて喜べますが。

 サルはポケットから小さな、真っ青なバナナを取り出しました。

 あやしいバナナ、です。

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