第32話 宇宙(パパ)
考え過ぎて、頭が痛くなってきました。
あたしは黄色いものを握り、深く呼吸をしました。
少し息苦しくはあるのですが、落ち付いてきました。
早くこのことを忘れ、お姉様の作品に没頭しなくては。
この作品は、あたしに唯一、生きる希望を抱かせてくれるものでした。
お姉様の文学性が膨張して膨張し→「三〇分寝かせたものがこちらです」ってわけで料理番組よろしく→お姉様の文学性は宇宙くらい膨張していることになるけれど→宇宙も負けじと膨張し、意外と負けず嫌いなのですね。
といったかんじ。
そんな考えに気をとられていたあたしに、小さな悲劇が起きました。
非常階段に落ちている青いバナナの皮を踏み、段から転げ落ちたのです。
なんでここにバナナ、脈絡なきバナナ、と腹が立つやらわけわからんやらで混乱はしましたが、まったく怪我はしませんでした。
ということは、このバナナはあってもなくても同じだったってこと?
ノートには、「いや、そのバナナを中心に、宇宙が膨張してるってこと」と小さくメモ書きがありました。お姉様の字ではありません。
宇宙(パパ)からのメッセージでしょうか?
それとも大いなる意志というやつでしょうか?
相変わらず、プライベートもへったくれもありません。
といいますか、この宇宙の中心って、あたしじゃないんですか?
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