第30話 一人きりにはなれないあたし
お姉様はきっと、この一見余剰だらけの詩で、生きることのエネルギーと尊さ、人生は一回きりなのだから懸命に生きるべきだと訴えたかったのではないかと思うのです。
聞くところによると、お姉様は推敲を一切しないのだと言います。
「人生は戻れない一筆書き」というように、そりゃあもう、素敵にたまらないことを目で語るのです。
これまでのあたしは、ただそれを素敵だと感じていました。
地球人に限りなく肉薄したように思え、気が楽になったのです。
ですが最近、〈死〉のことばかり頭に浮かび、その心地よさに水を差すのでした。
青い地球の地球人には、死がある。
消滅に限りなく近いが、何かが違う、死。
生命活動の停止に重きが置かれておらず、むしろ問題なのは〈心〉が残っているか、それに尽きるようです。
ふつうに考えれば(ふつうなんてあたしも偉くなったものです)生き物に必要なのは、まず肉体のはずです。
心が何を求め、叫ぼうとも、肉体が無ければ伝えることも体現することもできませんから。
肉体を基準に考えるなら、「あたしは一人きり」ということです。
ですが、心をあたしと呼ぶならば、そうもいかなくなります。
昔のように、心が一つきりとは思えず、あたしはやはり、〈あたし〉が一人きりだとは、にわかに思えなくなってきました。
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