第18話 a-3《ルールがほしい》
〈イエロー〉に半年も通うと、パパが教えてくれなかった、地球の常識(みたいなもの)が段々と身につきました。
非常識とされるこの場所で〈常識〉を習うわけですから、不思議なものです。
ここでは、本来言わずもがなであること、(まず、耳たぶは食いちぎってはいけないということ)を教えてくれました。
全てのルールは、煮詰めていくと「人がいやがることをしていけない」ということに帰結することに自然と気付きました。
しかし、なぜそれがいけないのかは、よくわかりません。
その理由は、教師たちではなく、あたしの数少ない話し相手である、とある用務員が説明してくれたのです。
「他人から嫌われすぎると、殺されちゃっても文句言えねーじゃん」
だから、「みんな悪いことをしないようにするし、悪だくみするとしても、こそこそやるんだ」と哀しそうに説明してくれました。
なるほど、人をいやがることをしてはいけないのは、自分が損をしたくないからです。(なぜ損をしたくないのでしょうか? 死にたくないから?)
つきつめれば、すべては自分の損得、ひいては生存のためだと最初から教えてくれたら、すごく納得がいきます。
教師たちも、「他人のため」などと歪曲した表現をせず、そう説明してくれたらいいのに、と思いました。
ですが、これではまるで尊いはずの〈死〉は怖かったり、いけないもののように思えませんか?
あたしがなにか、根本的な勘違いをしているのでしょうか?
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