第17話 あたしに似合う、文脈なき、黄色い花を。

「やめてください」

 うーん、やめてくれません。

 どうしても殴るのをやめてくれなので、仕方なくその子の耳たぶを食いちぎりました。一番いらなそうな部位だと、判断したのです。(これも、空気を読んだということになりますか?)

 教室中が悲鳴に包まれ、あたしはそのまま、気を失いました。

 あたしはかくして、平凡なジョシコーセーとしてではなく、〈イエロー〉の生徒として過ごすことを余儀なくされたのです。

 それまでの日常は〈日々〉ではなく、一つのかたまりでした。それは、あたし自身が一つのかたまりであるということです。

 ですが、その認識は間違っていたのです。

 あたしはあたしという一つのかたまりではない。「今日のあたし」は「昨日のあたし」の上に重なり、「昨日のあたし」は「一昨日のあたし」に重なっていて、あたしは層であり、集積である。それらのあたしは、文脈という結合組織で結ばれているのです。


 もしあたしが死んだら。

 褒めてもらえなくても、構いません。

 ただ、花を供えて下さい。

 あたしに似合う、文脈なき、黄色い花を。

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