第9話 勤勉なトースター

 そこまで言いかけて、パパはぜぇぜぇと息を切らしました。

 地球は空気が薄いのだそうです。

 パパは不完全燃焼といった様子で、

「要は、部屋を出るときに、ドアではなく、窓から出るようなコミュニケーションをしているに等しい」

 と青ざめた顔で言い、そのまま机に突っ伏してしまいました。

 言いたいことはわからないでもないですが、それはよくある意見の一つにすぎませんし、なによりワガママです。

 だって、宇宙旅行に行くためにはなにかしら機械が必要なわけですから、旅行には行きたいけど機械はよくないと批判するなんて。

 そう思いはしますが、黙っています。

 小さな反論として、機械であるテーブル上のトースターを眺めたりします。

 パパは毎朝、バターを塗ったトーストを、嬉しそうに頬張っていますから。

「ちがうんだ。トースターはいい。それしか役割がないし、勤勉だろう。なにより、トーストはすごくおいしいからね」

 まったく、自分勝手な話です。

 まぁ、パパらしい自分勝手さではあるのですが。

 ワガママなパパの余談はさておき、わかることは二つです。

 あたしたちは予期せぬ形でこの星にやってきてしまったこと。

 そしてどうやら、あたしは宇宙人らしい、ということ。

 あたしはそれをなかなか信じることはできませんでした。

 それでも、信じようと努力しました。

 いんちきだと否定し、パパが悲しむのを見たくないですし、なにより、そう信じない限り、あたしの居場所はなかったのですから。

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