第2話 a-1《黄色いなゆた》

 そう、あたしは宇宙人です。


 これは、あたしにとって確認するまでもない前提であり、地球人が地球人であることを疑わないのと、同じレベルで考えてもらいたいのです。

 ですが今、その自明の事実が揺らぎつつあります。

〈イエロー)というこの施設で日々を過ごすうち、そんな当然のことに疑念を抱くようになってしまったのです。

〈イエロー〉は正確には〈学校〉ではありません。ですが、〈イエロー〉を説明するのには、正確な描写より、〈学校〉であると説明した方が、うまく伝わるでしょう。

 今はちょうど、教室で授業が行われている最中です。コンパスを使い、美しい丸を描くという内容です。

 全員ができるまでは帰れません。何事にも連帯責任がつきまとうのが、この教室での基本ルールなのです。

 誰が決めたのかもわからない、今はいない誰かが考えた、もはや無意味なルールだと、みなもわかっています。一種の悪意なき害悪と言えましょう。

 ちなみに、あたしはとうに書けていました。(ほれぼれするような、美しい丸です)

 そりゃそうです、たったひとつ、コンパスで円を描けばいいのですから、簡単なことです。

 一人、また一人と書き終わり、教室中に、ピリピリとした空気が充満してきました。

 何度書いても綺麗に描けない生徒がいたからです。

 その彼は力みすぎてコンパスの脚が開いてしまったり、針が紙から抜け、中心がずれてしまったりを繰りかえしていました。

 みな、非難がましく彼を一瞥します。

 それは、てんという名の、男子のクラスメイトです。

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