私は彼の電話番号を打ち、耳元にスマートフォンを押し付けた。

 プルルル、プルルル。プツッ。短いコール音が数回した後に、相手が出た。

 ——もしもし。

「もしもし。あの、マサキさん?」

 ——あ、ええ。はい。昨日はどうも。

 私の声に、マサキは一瞬だけたじろいだように思えた。が、彼の動揺はさておいて、私は開口一番、聞きたいことを聞いてみた。

「ねえ、マサキさんでしょう?」

 ——え、何がです。

「彼女のフリをして、私にメッセージを送ってきたのは」

 ——彼女って、誰のことを言っているのか。

「ミナちゃんよ。それくらい分かるじゃない!」

 ——ミナさん?フリ?えっと。なんのことですか、それ。

 聞いている私でさえ力が抜ける程に、とぼけた声。数秒遅れて、頭に血が上る感覚。

 彼の軽い態度に、我慢がならなかった。ここまで来て、言い留まることなんてできそうに無い。このまま、自分の感情と考えの赴くままに、突き進むしか、その時の私にはなかった。一度深呼吸をした後に、彼に伝わるように説明する。

「たった今、あの子の名前で、スマホにメッセージが送られてきて」

 ——は、はあ。どんなものだったんですか。

「私のせいで、自分が死んでしまったなんて内容で」

 無言の彼に、語気を強めて話す。

「あなたなのよね。だって…」

 ——明日の夜。

 そこで突然、彼は私の言葉を遮った。

 ——ミナさんの葬儀を、あの廃校で行います。

 見当違いの話をする彼。私は電話口ながらも、一瞬呆然とする。

「今はそんな、死者を弔う話をしているんじゃなくて…」

 ——全て、はっきりしますよ。

「はっきり、ですって?」

 私はスマートフォンを両手で持ち、口元の前に持ってきた。

「あのね。私の言っていること、分かる?こうして今聞いたのは、今まさに、そのことについて知りたいからなのよ。なんで、もったいぶって明日なんか。それに第一ね、あの子が死んだのは私のせいなんかじゃ…」

 ——明日の!

 一際大きな声で、彼はそう告げた。私は思わず、息を呑んだ。

 ——葬儀。必ず来てください。

 機械のように淡々と、それでいて氷のように冷たい口調。二の句を継げなくなった私に、今度は暖かい口調で最後に述べた。

 ——皆で待っていますよ、スミエさん。

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