3
私は彼の電話番号を打ち、耳元にスマートフォンを押し付けた。
プルルル、プルルル。プツッ。短いコール音が数回した後に、相手が出た。
——もしもし。
「もしもし。あの、マサキさん?」
——あ、ええ。はい。昨日はどうも。
私の声に、マサキは一瞬だけたじろいだように思えた。が、彼の動揺はさておいて、私は開口一番、聞きたいことを聞いてみた。
「ねえ、マサキさんでしょう?」
——え、何がです。
「彼女のフリをして、私にメッセージを送ってきたのは」
——彼女って、誰のことを言っているのか。
「ミナちゃんよ。それくらい分かるじゃない!」
——ミナさん?フリ?えっと。なんのことですか、それ。
聞いている私でさえ力が抜ける程に、とぼけた声。数秒遅れて、頭に血が上る感覚。
彼の軽い態度に、我慢がならなかった。ここまで来て、言い留まることなんてできそうに無い。このまま、自分の感情と考えの赴くままに、突き進むしか、その時の私にはなかった。一度深呼吸をした後に、彼に伝わるように説明する。
「たった今、あの子の名前で、スマホにメッセージが送られてきて」
——は、はあ。どんなものだったんですか。
「私のせいで、自分が死んでしまったなんて内容で」
無言の彼に、語気を強めて話す。
「あなたなのよね。だって…」
——明日の夜。
そこで突然、彼は私の言葉を遮った。
——ミナさんの葬儀を、あの廃校で行います。
見当違いの話をする彼。私は電話口ながらも、一瞬呆然とする。
「今はそんな、死者を弔う話をしているんじゃなくて…」
——全て、はっきりしますよ。
「はっきり、ですって?」
私はスマートフォンを両手で持ち、口元の前に持ってきた。
「あのね。私の言っていること、分かる?こうして今聞いたのは、今まさに、そのことについて知りたいからなのよ。なんで、もったいぶって明日なんか。それに第一ね、あの子が死んだのは私のせいなんかじゃ…」
——明日の!
一際大きな声で、彼はそう告げた。私は思わず、息を呑んだ。
——葬儀。必ず来てください。
機械のように淡々と、それでいて氷のように冷たい口調。二の句を継げなくなった私に、今度は暖かい口調で最後に述べた。
——皆で待っていますよ、スミエさん。
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