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結局、オオヤは電話に出なかった。
留守番電話サービスの音声が流れる以上、彼が私からの着信を拒否していることはないようだ。
しかし職場に居らず、携帯にも出ないとなると、何かしら手が離せない、プライベートな事情で忙しいのだろうか。
それか、まさか…
その時頭の中では、一つの仮説が立ち上がっていた。
彼の名刺があの場所にあったということは、もしかすると彼もまた、人生やりなおしっ子サイトに参加した人間の一人なのではないかということ。
あのサイト関係以外で、廃校に用事がある輩は基本的にいない。だとすると、名刺が落ちているとすれば、彼が私達と同じ立場であの場所に来たと思えば、しっくりきた。
痛む心を休めるように、私は胸のあたりに手を当て、ゆっくりと呼吸をした。
ただし、これはあくまで私の中での仮定の話である。正しいかどうかは分からない。とは言いつつも、可能性としては十分にあり得る。―彼もまた、私と同じだから。彼なら、サイトに登録しても不自然ではないのである。
一人考え込んでいたその時、スマートフォンがブルルと震え出した。
着信。まさか彼が、私が電話したことに気が付いて折り返してきたのか。
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