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ぎぎ、ぎりぎりぎり。
縄状のロープが首に絞まっていく音と感覚、そして臭い。慣れることなんて無い。わずかに差し込む光に照らされた、薄暗い部屋で私は一人息を荒げた。
昨夜のこと…駄目だ。忘れたいのに、今でもしっかりと思い出せる。吐き気が自らを襲う。急いで洗面所に向かい、洗面台に突っ伏した。
じゅわりと、胸の辺りが焼けるような熱さ。そのすぐ後で口内に苦味が広がり、黄色い泡ついた液体を吐き出した。胃液だ。
喉が痛い。気持ちが悪い。よろよろと口と手を洗う。タオルで水を拭っている最中、鏡の中の自分自身の姿が目に留まった。
まだあれから数時間しか経っていないのに、数年は老けたようで、すこぶる顔色が悪い。そこにいる私は、私のようで私ではなかった。
「はあ…」
カサついた唇から、無自覚に吐息が漏れる。心が落ち着かない。そのまま、覚束ない足取りで洗面所の扉を閉め、目の前のベッドへと向かった。
どうして、こうなってしまったのだろう。
自業自得と言われても、言い返せそうになかった。しかし既に行なったことを、今更後悔しても遅い。
あの後は、どうなったのだろうか。そのことばかりが、気になって落ち着かない。ニュース等の話題に挙がっていないあたり、まだ見つかっていないのだろうか。
まだ、あの場所に?
そのことに安堵しつつも、彼女の最期の表情を想像するだけで、再び気分が悪くなる。叫びたくなる程に、胸がむかむかする。
ああ、駄目だ。
やはり、自分はこういうことに向いていない。
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