第17話 第四部:星降る

この日はどっと疲れが来たような気がする。

朝から二時間以上運転して、そして何回もずっこけたからであろう。


コテージに着いたのは夕方五時をすぎた頃であった。途中のスーパーで適当に具材を買い鍋パをする予定であった。

買い物ではさっちゃんが張り切ってくれたおかげで僕は何もすることはなかった。


「一日目お疲れさん!かんぱーい」


ケイ先輩の一言からやっとビールが飲めた。

外はキンキンに冷えていたが、キンキンのビールがとてもうまい。そして適当に放り込んだだけの鶏肉きのこ鍋も悪くない。


コテージはダイニングとキッチンがあり、ベットルームにロフトがあるといった簡易宿泊施設のようなものだった。外にはウッドデッキがあるが活躍するのはこの時期以外であろう。

山奥にあるため、道路沿いに何軒か同じような建物が並んでいるが窓から見える景色はただの暗闇であった。


鍋も食べ終わり僕たちは学生らしくトランプで飲みゲーをしていた。と言ってもソフトに楽しむくらいで、泥酔まで飲むことはなかった。


「じゃあうちらロフトの方のベットね、ロフトって新鮮だから」


さっちゃんはゲームで勝って嬉しそうに二択のベッドルームを選択した。


「いいね、俺もロフトで寝てみたかった」

「ちょいまち、俺とケイ先輩がしたの部屋じゃないの?」

「まあいいじゃん、俺ら付き合ってるし」

「そうだけど」


お家探検でこのコテージにはベットルームが二つ、ダブルベットというのは知っていたからてっきりケイ先輩と僕で寝ると思っていたのに。


「カネキ、多分明日の朝ロフトのはしご降りれないから下でいいじゃん」


(確かにずっこけまくったけどさぁ、、、なんでそっち側ついてんのあやかさん)


ウッドデッキには二つのキャンピングチェアと小さな丸テーブルが置いてあった。全身が痛いため深くチェアに腰をかけてタバコに火をつけた。

(疲れた、何が面白いんだよ、こんなところ)


「タバコ一本ちょうだい」

「いいですよ、あやかさんも吸うんですね」

「なんで敬語になってんの」

「まあなんとなく?タメの方がいい?」

「うん」


今日は久しぶりにタバコを吸った気がする。朝に一本、息のPAで一本、ゲレンデではほとんど吸わなかった。

ここではタバコよりも自然の空気の方が美味しく感じる。


「たまに吸うんだよね、タバコ」

「よく我慢できるね、俺なんか勿体無いくらい家で吸っちゃうよ」


「元カレが吸っててさ、嫌いじゃないんだ」

「ああ、そうなんだ」


(返事なんて思いつくか!)


「元カレ、地元に人でこっちに住んでるんだけど、この自然をタバコの煙で汚しきってやるぜとか言って」

「一万本吸っても足りなそう」

「最初は嫌いだったけど、綺麗な景色見ながら吸うのは好きになった」

「まあ確かに、気分の問題ね」


「星綺麗なんだよ」


確かに綺麗だった。今まで見たどの場所での星よりも。


「確かに、空気澄んでて標高少し高いもんね、俺こんな綺麗な星見たことないわ」

「’A Star Shines in the Winter Night’って歌があってね」


そこからの話は覚えていないけど、景色だけは覚えている。今まで見たことのない星の数、一つ一つの星の輝き、どれもが僕には新しいものだった。

星が降っているみたいだった。




「じゃあおやすみ」

「うんおやすみ」


結局僕とあやかさんは同じベットで寝ることにした。僕はソファで構わないと言ったが明日何もできなくなるとあやかさんが言ったのだ。

ダブルベットは大きい。結局お互い壁の方を向いて寝た。

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