第9話 第二部:新たな障害

年末年始、僕は家族と過ごした。基本はクリスマスを過ぎれば忘年会や新年会などの予定が埋まることがほとんどであるが、今年は遠くに行くのも面倒になり、せっかくの大学一年目の年末年始を家族と、少しの地元の友達と過ごした。


対するもえかは宮城に帰省したのが12月27日。クリスマスからというものいつもと変わらずに連絡を取ってはいたが、何かが変わることなく形式的な挨拶をした程度だ。


大学生の冬休みは長いわけではない。ほとんどの大学が1月の二週目から授業が再開する。そんな中年始の温もりが残る中僕は大学にダウンジャケットを2枚重ねて大学に向かっていた。


年が明けて2週間と少し、今日は年明け初めてもえかと飲む約束をしていた。いつもの如くもえかの家で21時集合である。お互いに夜ご飯はすませ、家で軽く飲もうということだった。


授業が終わり家に帰ったのは14時くらいであった。僕はソワソワしていた。何をしても手につかない。いっそこの時間からお酒でも飲んでやろうかと思ったが親にバレそうであったため止めた。その代わりに車を少し走らせ銭湯に向かった。


僕は冬の銭湯が一番好きだ。露天風呂のある銭湯の冬は外にあまり人はいない。さむいからであろう。しかし僕はそれが好きだった。ほてった身体を急速に外気が冷やしてくれることで頭まで冷静になれるような気がしているからだ。


また自宅に戻りご飯を食べてもえかの家に向かう。途中のスーパーで今日はレモンをソーダ水を買った。


久しぶりに家に戻ってきた気分であった。


「お邪魔します」

僕はいつでもこの言葉から入る。

「明けましておめでとうございます」


改めて言われると、さらに直接頭を下げて言われると新鮮だったし、抱きしめたい気持ちに駆られた。しかしあまりにも丁寧に言うものだから僕も丁寧な返事を返した。


いつもの会は何もなくいつも通りであった。去年のクリスマス、つまりは3週間前にはあんなことがあったのに。 


そこから、一ヶ月に2、3回はこのように二人で飲んでいた。一駅隣の繁華街に行くこともあったし、同じ駅であるから二人で一緒にサークルの飲み会に行ったりもした。そこで一緒にくるものだから付き合っているのかとなど聞かれたが、僕より先にもえかが同じ駅だし近所だから一緒なだけだよと端的に答える。僕には複雑な気持ちであった。


そんなこんなで僕たちは大学二年生になっていた。新入生から二年となり環境はだいぶ変わってしまった。


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