第4話 手を繋いだ日のこと

なぜかわからないがお酒を買い出しに行ったコンビニの行き帰りは手を繋いでいた。このことは僕の心を大きく動かした。一緒に家で飲んでいる時から段々と彼女に惹かれていったが、今回は決定的であった。


彼女が好きだ。


そんなことを伝えられる勇気は僕にはない。最後の彼女は高校一年生の時である。中学からずっと両思いで付き合っていたが、高校が別になり共学の高校である元カノと男子校の僕では付き合い続けるのは難しかった。僕が嫉妬をして別れを切り出して以来、彼女はできていない。


正直、女性が苦手なのであるかもしれない。男の僕には理解できないことが多すぎると思う。反対に女性には僕の心の中まではわからないであろう。これは世界のどこを探しても全てをわかり合っている男女はいないはずだ。




手を繋いだ後の宅飲みでは少し気まずかった。酔いも一度冬の外を歩いて帰ってきたためほとんど冷めていた。

しかしもえかは違った。いつもはあまり飲まないもえかが酔っ払っていることは薄々わかっていた。家に入った際にキッチンに置いてあったビールの缶を見たところ、僕が誘う前に三缶ほど飲んでいたのであろう。


「あのさ、カネキって好きな人っているの?」

(今さっき完璧にお前になったよ、、、)

「いやー今はいないかな」

「どーせ、いろんなサークルの子たちとと遊んでるんでしょー」

「いやー、あんま遠くまで飲み行くの苦手だからあんまだよ」


少しの沈黙を挟みもえかが

「この前ケイ先輩と二人でうちで飲んだの」


ケイ先輩とはサークルの一学年上の先輩である。

そしてそれを聞いた僕は驚いた。つい三ヶ月前に入ったばかりなのに意外と先輩たちと交流があるのだなと。それとともに少し嫉妬を感じた。


「そうなの、仲良いんだ」

「さっちゃんと3人で飲んでからその後二人で飲んだんだ」

「なんか俺らも最初そんな感じだったよね」

僕は笑いながらも悔しさが嫉妬がケイ先輩への羨ましさが複雑に混じったどんな顔をしていただろうか。


「最初にサークルの活動で初めて入ったうちに優しくしてくれてさ」

「好きだったんだよね、そこから」


(え、、、)

(俺ともいっぱい飲んでるのに、たくさんあってるのに)

(あんな女たらしの先輩の何がいいんだ)


「ケイ先輩かっこいいよね、俺らにも優しいし」

「うん、それでさっちゃんに言って飲みにいったんだ」

「いいじゃん、それでなんか進展でもあったの?」


僕は珍しい行動をとるもえかに何かあったことはわかっていた。それがきっと良くないことであることも予想はしていた。


「二人でうちで飲んでてその後一緒に寝たんだ」

「そうなんだ、終電なかったのか」

「まあね」

「手出されなかった?」

僕は冗談っぽく笑いながら聞いてみた。

「うん」


(うん?)

なんてことだ、30分前に本気で好きになった相手がそんなこと人っているなんて。僕は複雑な感情で気分が悪くなったようだった。


「そっか、ケイ先輩にはなんか伝えたの?」

僕はこれ以上聞きたくもなかったが、もえかのことをもっと知りたかった。


「好きって言ったよ」

「そっか、その先は聞いていい?」

「うん、振られちゃった」


(は?)

(手を出した上に告白されて振るってどんな神経してんだあいつ)


「残念だよね、うち初めての告白だったし、そういうことも初めてだったし」

「なんか男ってそういう生き物なのかなって思っちゃった、自分が満足できればいいみたいな」

(確かに俺にも思い当たる節もある)

「男がみんなそういうわけではないとは思うけどなー」

「カネキはさ、うちに来てもなんもしないし、その言葉説得力あるわ」

(俺だって我慢してるんだよ、、、)

「まあねー、一緒に飲んでくれるだけで楽しいよ」

(これは本音である)

「カネキは友達って感じがして安心感があるわ」

「ありがとう」

(おいおい、辛すぎるぜ)


そしてもえかはベットに寝っ転がりながら話を聞いていた。僕も床に寝ながらいろんな話をした。そこから僕は自分がいかに惨めな恋愛をしてきたかや、犬の魅力や、男子校のむさ苦しさなどを力説した。少しでももえかのここをの傷を癒せるように。そして自分今の気持ちを楽にするように。


初めてもえかの家で朝を迎えた。初めての朝日は僕には眩し過ぎた。

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