第3話 ご近所付き合い?

それからというもの、もえかとは家が近いからよく飲みに行っていた。僕からは飲みに行くということだが、お金のない学生としてもえかの家で飲むことがほとんどであったため、もえかからすると飲みにくるというのが正しいであろう。多い時では週2回ほどもえかの家で飲んでいた。家が近い分もえかからOKが出れば終電関係なく深夜でも歩いて飲みに行ったものだ。


しかし男女二人で飲んでいると言っても何かが起こるわけではなかった。僕はお酒が程よく回ってきたら歩いて家に帰るからだ。そのためもえかの家で寝たことは最初以外一度もないのだ。


また新しく鍵を買った時の組み立てや、洗濯機が台から落ちた時、また家に蜘蛛が出たときにはすぐに駆けつけた。元々ほっとけないたちであったのといつも家で飲ませてもらっているからだ。


僕たちは週に一回以上は一緒に飲んでいるが話には飽きなかった。お互いの高校生までのこと、やはり近くの美味しいお店の話(お金がないためあまり行かないが)、趣味やスポーツのこと、好きな食べ物などいろんなことを知っていった。


もえかの好きな食べ物はたこ焼きで、好きなアーティストは韓流アイドル、中高も女子校で、ずっとバスケットボールをやっていたこと。最近は料理にハマっているらしく、家で飲む時はつまみいらずで何かしら作ってくれて助かった。僕も料理は好きでキッチンに並んで二人でお酒を飲みながら料理をすることも多かった。また趣味は散歩であるらしく、昼間に三匹もいるうちの犬の散歩にもよく付き合ってくれた。


なんだか僕は結婚ってこんな感じなのかと思ったりもした。しかし住んでいる場所は近いが別々であるし、家で飲んでいる時も必ずパジャマではなく私服で化粧もしていた。もえかは隙がないなと感じた。


そんな時僕が地元の飲み会で飲み過ぎてしまった際に一駅隣から歩いて帰っている際にもの寂しくてもえかに電話をかけたことがあった。帰り道の途中にもえかの家があり酔っ払いの勢いで飲もうよと誘ったところ、いいよと。僕はコンビニでジンジャーエールを購入しもえかの家にむかった。


もえかはジンジャーハイが好きでウイスキーは家にあるはずだと思った。家についていつもの如くお邪魔するともえかは無防備なパジャマ姿であった。初めて見る姿に驚いたが、深夜1時を回っていたため当然ではある。


僕はオーバーオールを着ていたためとても居心地が悪くもえかに短パンだけ借りて着替えた。そうして飲み進めているとすぐもえかが言った、

「ウイスキー切れちゃったんだけど」

「あれ、まだあると思ってたんだけど」


僕の飲んでいる缶チューハイはまだまだ残りがあるところを考えると始まってまだ30分くらいと言ったところか。


「急に来た俺が悪いし、今日はもう帰ろうか」

僕はだいぶ酔いが回っていたためそろそろいいかなと思っていたところであった。


すると、

「今日はなんか寝付けないからまだ飲みたい、コンビニ行こ」

そんな言葉が出るとは思わなかった。もえかはあまりお酒をたくさん飲むタイプではないし、強引に家で飲むことを誘ったりしことが今までなかったからだ。


二人ともパジャマ姿で深夜2時のコンビニまで歩いていった。


「ここさっき歩いて帰ってきた道だよ」

「その駅からはここ歩いて帰ってくるのね」

「そうそう、一番近い道だし明るいからね」

「電話かけてきたし寂しかったの?」

冗談まじりにもえかが聞いてきた。

「そりゃもちろん、一人で歩くのは寂しいからね」


するともえかは急に手を繋いできた。


「どうしたの?」

「こうすれば寂しくないじゃん」


なんだかもう寒くなってきた十二月、暖かさを感じた。



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